2019年11月 アーカイブ

2019年11月24日 14時44分56秒 (Sun)

品質管理学会年次大会  WG2活動状況の発表概要

以下は私が担当したWG2の活動状況に関する発表の概要です

1)研究テーマ設定の背景とDFSS
 日本製造業の現状に関するディスカッションから,お客様の期待を超える製品を発案し,その性能とロバスト性を製品企画前の技術開発段階で両立確保することを課題に設定した。その課題達成に最も効果的な現存するプロセスがDFSSであるという認識を共有化し,DFSSを研究活動のベンチマークに設定した。

2)日本企業の課題 自動車産業を例として
 日本企業が国際競争力を持っていたころは社員の改善力や発想力を引き出す仕組みや組織文化があった。それが高品質と独自製品を生み出す原動力であった。ところがバブル崩壊後,短期利益追求型に経営がシフトし,品質よりもコスト優先となった.本来は緊急避難で一時的な施策であるべきだが,それが現在でも常態化している.その一方で海外では欧州が産学共同開発体制を構築し開発力を高め,CASE等の100年に一度の大変革への対応体制を整えている。

日本企業の課題:
人の改善力を取り戻す
創造性を活かす
同時に開発効率を飛躍的に高める

3)MBDと品質工学の関係性
理想の機能をモデル化し,その理想を実現する構造を考案するアプローチは,品質工学における基本機能を考案・定義した後にサブシステムを発案・選択し,その制御因子の水準を最適化するアプローチと共通である。このアプローチが技術者の創造性をあるべき方向に引き出す。

4)R-FTA,公理設計,CS-T融合プロセスの提案
Step.1 R-FTAで目的機能を各要求機能(FR)に展開する
Step.2 各FRを縦軸,FRを達成する技術案を横軸に公理設計実施し技術課題の範囲を見える化する
Step.3 Step.2の範囲を対象にCS-Tを実施し改善メカニズムを把握する
このプロセスを小型折り機構開発に後追い的に適用し,その有効性を確認した

5)R-FTA,品質工学,TRIZ融合プロセスの提案
R-FTAをエネルギー変換の基本機能で実施する。その結果,ほしい基本機能とほしくはないが必要な機能を分けることが可能になる。ほしい基本機能の向上を徹底することでブレークスルーが実現する。マツダのスカイアクティブ技術はこのプロセスで実現した。
さらに,公理設計の横軸に水準設定可能な制御因子を入れることで各FRを改善する水準方向を設定する。これによって矛盾が見える化される。抽出された矛盾に対してTRIZや簡易CAEベースのパラメータ設計やCS-Tを活用する.

6)今後の課題
他の分野も含めて実践活用事例を増やす
複数のサブシステムからなるトータルシステムの全体最適アプローチ
上流企画プロセスとの連携

以上

2019年11月24日 13時55分49秒 (Sun)

品質管理学会年次大会  企画セッションの概要

品質工学会と品質管理学会の共同研究会 ”商品開発プロセス研究会”が2018年11月にスタートし,昨日の品質管理学会の第49回年次大会で4つの発表からなる企画セッションを設定させていだたき,研究会の活動状況を報告しました。
本研究会はWG1,WG2,WG3の3つのWGからなり,各WGが連絡を取り合いながら並行して研究活動を継続しています。現在は品質工学会からは企業からのメンバー,品質管理学会からは大学からのメンバーが中心となり合計で31名の委員が参加し,新たな商品開発プロセスの構築を目指しています。このような企業と大学の2つ学会からなる共同研究は他国にはない日本独自の産学共同体制ではないかと思います。

司会:電気通信大学 山本渉 全体幹事

1、商品開発プロセス研究会の活動紹介
   近岡技術経営研究所 近岡淳 主査
   統計数理研究所  椿広計 主査

2、WG1 ”顧客価値創造の上流工程プロセスの研究”の活動状況報告
   和光大学 丸山一彦 WG1幹事

3、WG2 ”創造性と効率性を両立した技術開発プロセスの構築”の活用状況報告
   ㈱リコー  細川哲夫 全体幹事 兼WG2幹事 代表発表
   ASI     田口伸
   サワダ技研 沢田龍作
   マツダ㈱  武重伸秀

4、WG3 ”損失関数の新事業プロセス評価への適用研究”の活動報告
   慶応義塾大学 山田秀 WG3 幹事 代表発表
   ㈱リコー   廣野元久 代表発表
   ㈱シマノ   太田勝之
   電気通信大学 山本渉 全体幹事

以上

2019年11月17日 18時10分46秒 (Sun)

ISO 56002:2019 イノベーション創出のマネジメント手法 その3

行動指針(素案) 経営者への7つの問いかけと12の行動指針から

行動指針3
経営者自らが戦略に基づき,情熱のある役員と社員を抜擢し,常に守護神として現場を鼓舞し,活動を推進する

これも新規事業を成功させる上でキーファクターとなるとても重要なポイントです.LIMDOW-MOの技術開発の成功要因の一つが経営者の適切な関与でした.実はシステム選択と考案を繰り返す技術開発プロセスは品質工学の戦略を知らない方々から見ると単なる失敗の連続に見えてしまいます.さらには,システムを選択・考案しては,十分な研究活動をせずに,システムの可能性を短期間に捨ててしまう.もっと腰を据えた研究開発をすべき,というような批判の目もあったのです.そして我々メンバーもそんな空気の中で,このような技術開発を進めても成功する保証はないし,1年以上もリソース投入して,製品化を断念する結果になったら,このような技術開発プロセスまで否定されてしまうであろう.であるならば今の時点で製品化を一旦断念すべきという考えに傾いた時期がありました.

そんな状況のときに,当時の技術トップの吉田専務から私に直接電話があり,品質工学を活用した今の開発のアプローチを最後の最後まで実行せよ,との指示があったのです.このたった一本の電話で我々技術者のモチベーションが急上昇し,リスクをとって6層膜や7層膜での製品化に向けた様々なチャレンジをすることができたのです.

2019年11月17日 17時45分13秒 (Sun)

ISO 56002:2019 イノベーション創出のマネジメント手法 その2

ジェームス・マーチ氏 スタンフォード大学名誉教授

 知の探索と知の深化・活用をバランスよく実施すること

これも経験的に納得感があります.LIMDOW-MOの技術開発にあてはめて考えてみると,知の探索が新規のシステム選択や考案に相当し,ロバストパラメータ設計による性能と品質両立限界の評価と改善メカニズムの解明が知の深化に相当しています.そしてさらに改善メカニズムの理解から性能と品質の両立範囲を広めることが可能なシステムを考案することが深化させた知の活用に相当します.QMODの報告のブログで報告したスウエーデンのHakan Wiklund教授のプレゼンでのPDSAサイクルとの共通性を感じます.

2019年11月17日 17時18分06秒 (Sun)

ISO 56002:2019 イノベーション創出のマネジメント手法 その1

品質工学会と品質管理学会の共同研究会”商品開発プロセス研究会”の第5回WG-1研究会WG-1が11/11に開催され,㈱テクノファの平林委員からイノベーションに関するISOと関連情報に関する紹介がありました.その内容が私の過去の経験からとても納得できるものだったのでその一部を紹介します.

・クレイトン・クリステン氏 ハーバードビジネススクール教授
  新規事業は既存事業と資源の一部は共有化するが,プロセスと優先順位は共有化しない

1993年のLIMDOW-MOの技術開発がまさにそうでした.当初の2層膜から出発し,7層膜方式に至るシステム選択と考案を繰り返す技術開発プロセスは,既存事業や従来の研究業務のアプローチとはまったく異質であり,出島形式の本体から独立した組織だからこそ実行できたのです.もし従来組織のマネジメントが適応されていたら,当時としては非常識であった7層膜方式の技術開発は否定されていたでしょう.我々技術者が自律的に意思決定できる環境であったことが技術開発の成功要因であったのです.過去の常識に基づくマネジメントやマイクロマネジメントは技術者の創造性を抑圧し,結果として新規事業の成功確率を下げてしまうのだと思います

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