2020年5月 アーカイブ

2020年5月31日 14時46分59秒 (Sun)

ハードからソフトソリューションへは本質か? その2

その1では日本の製造業は新興国だけではなく欧米企業にも負けている現実を共有化しました.
そして弊社も含めて国内の製造業がハードからソフト・ソリューションへの事業シフトを経営戦略にしている現状もお伝えしました.

私は,ソフト・ソリューションへのシフトという戦略では中長期的にはグローバル競争で生き残れないと思っています.なぜならばハードもソフトも手段であって,それ自体が価値ではないからです.
富士通でのハードディスク事業では,オフィス向けのPCという成長市場がすでに存在し,そこにハードディスクという単体製品を提供するとことを目的として技術開発や製品設計をしていたのです.記録密度や回転数などの技術特性の達成だけを目指していました.
技術ロードマップに従って与えられた目標スペックだけが全てであり,
我々のハードディスクがお客様にどのように使われるかなど誰も意識していませんでした.

具体的な数値目標がないと仕事が始まらないと思っている技術者がほとんどですが,
この与えられた数値目標を達成するという仕事の進め方が日本が国際競争力を低下させた大きな要因の一つだと思うのです.

我々が持っている技術の特長を活かす市場を想像し,
想像した市場のお客様の潜在ニーズを実現するために技術手段を創造あるいは設計するという活動が今後の日本の技術者に求められます.

例えばハードディスクを携帯音楽プレーヤーに活用する,家庭の録画装置に活用するなどは,既に実現されていますが,
当時の富士通にはこのような自由な発想が生まれる雰囲気がありませんでした.企画部門だけではなく技術者が自らの生き残りのためにこのような発想をしても良いと思うのです.そしてPCと番組録画では使われ方がまったく異なるので要求される技術特性や目標レベルも異なるはずです.もし現在の技術だけでは新しい市場向けの製品設計ができないのであれば,それが技術開発のテーマになるのです.既存市場のロードマップだけではなく,新たな市場を創るための技術開発です.

”ハードからソフト・ソリューションへ”は本質ではなく,本質は”お客様に新しい価値を提供する”ことであり,それが今後の競争軸になると思うのです.狩野モデルの一元的品質で圧倒する,あるいは魅力的品質を実現することです.ウオークマンやカップ麺など,現在の日本企業よりもかつての日本企業の方が得意だったような気もします.そこにはマネジメントの問題もありそうです.それについてはまた別の機会に・・・

2020年5月31日 13時29分21秒 (Sun)

ハードからソフト・ソリューションへは本質か? その1

コロナの影響で多くの事業が縮小や撤退に追い込まれています.
弊社の複写機事業も在宅勤務の浸透でその必要性が改めて問い直されることになるでしょう.
ペーパーレス化の方向性は織り込み済みですが,それが当初の想定よりも速いペースで進むことになりそうです.

そして,複写機やプリンタのような単体ハードを売る事業が厳しい状況になる一方で,
お客様企業の課題を解決するソリューション事業が伸びています.
コロナ渦での業務変革もビジネスチャンスとなりそうです.

実はこのハードからソフト・ソリューションへの事業シフトは2000年代に富士通で経験しております.
富士通はハードからソフト・ソリューションへと経営の軸足を大きく変えた国内最初の企業であったと思います.その頃,技術の現場で何が起きたか,そしてあの頃,我々は何をすべきだったのかについて考えてみます.

何が起きたか
一言でいえば利益貢献できない事業の縮小,撤退,売却です.

大型プリンタを富士ゼロックスへ,プラズマテレビを日立へ,半導体岩手工場をデンソーへ,
化合物半導体を住友電工へ,などなど
私が所属していたハードディスク事業も媒体事業の昭和電工への売却などの様々な施策で撤退となりました.
数千億円の売り上げ規模でしたから,社員に与えたインパクトは相当なものです.
朝,いつものように会社の事務所に着くと,全員が食堂に呼び出され,テーブルの上には転職案内のパンフレットがあり,早期退職の説明会が開催されたことを思い出します.
多くの社員が社内での活躍の場を失い,社外に活路を見出すことになりました.

そのころの日本のハード系事業の国際競争力の低下は韓国や台湾などの新興国の台頭が要因であって,
大規模投資ができなかった日本勢がコスト競争力で負けたのであり,技術で負けたのではない,というような論調が多くありました.ハード事業の主役は欧米から日本へ,そして日本から韓国や台湾,さらに中国へという流れは自然に感じますが,ハードからソフト・ソリューションへのシフトが本質的な解決策ではないと思っています.

ハードディスクで勝ち残った企業は米国のシーゲートとウエスタンデジタルです.
両社ともハードディスク専業メーカーでした.日立,東芝,富士通などの総合電機系の方が専業企業よりもリスクが低いと思っていましたが,日本勢は彼らに勝つことができませんでした.そしてハードディスクなどの回転デバイスから半導体個体デバイスへの大きな流れの中で,かつてハードディスク専業メーカーであったウエスタンデジタルは今では半導体企業としての国際競争力も獲得するに至ってます.
https://pc.watch.impress.co.jp/docs/topic/special/1225309.html

半導体製造の心臓部であるステッパーもかつてニコンとキャノンが市場を独占していましたが,今はオランダのASMLが市場を独占しています.単純な投資競争で負けたのではない,欧米もハード事業でしっかり生き残っているという事実を認識する必要があります.

プロフィール

プロフィール画像
ニックネーム 
TETSU
メッセージ
品質工学でブレークスルー
座右の銘
あきらめないこだわらない

ブログ

1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031
QRコード
携帯用QRコード