2020年7月 アーカイブ

2020年7月19日 18時17分55秒 (Sun)

輝いていたころのソニー

7/17にWEB開催された東北品質工学研究会において,日本製造業が再び国際競争力を取り戻すにはどうしたらよいかについて議論をしました.その中で数年前にソニーを定年退職された方から,かつてのソニーはどのようにして競争力のある製品を次々と生み出していったかについて,当時の社内の様子を聞くことができました.これが再び日本製造業が競争力を取り戻す方向性であり,かつてのソニーのような文化を実現するためには経営層や人事部門の考え方を変える必要があるということが共有化されました.

かつてのソニーでは残業時間の管理がルーズで,定時以降になると開発,設計から生産技術まで含めていろいろな部門から社員が勝手に集まって,フリーディスカッションをするという文化だあったそうです.そのフリーディスカッションの内容は日々の課題の解決から新しい製品の企画まで幅広く,そこから様々なアイデアが発想されたとのことです.そして驚いたことに,それらアイデアを実現するための裏金まであったらしく,それを使って試作品まで作ったりしていたそうです.このやり方であれば,あまりぱっとしない技術は闇から闇に葬ることも簡単です.そしてさらに重要なことは,この定時以降の自由な活動から新人技術者が育っていったとのことです.かつてのソニーでは,このような自由かつ自律的な活動の価値を経営層も含めたマネジメント層の方々が良く理解していたのだと思います.現在の日本の製造業の経営層の方々にも創造活動はこのようにやるものである,という認識を持っていただく必要がありそうです.20%ルールなどを作って本来は自発的であるべき活動を管理するようなマネジメントで技術者の創造性を引き出せるのか疑問です.そもそも創造性は管理によって伸びるものではなく,逆に管理は創造性を抑圧する方向に働くと思うのです.

2020年7月15日 12時48分17秒 (Wed)

ロバスト性確保の壁はマネジメント

ロバスト性確保の壁はマネジメントこの図は世界的に有名な狩野モデルの3つの品質に品質工学の性能とロバスト性を対応させたものです.
 タグチメソッドによる技術開発 日科技連 P.12 図1.6

性能が一元的品質,ロバスト性が当たり前品質に対応し,多くの場合両者はトレードオフ関係にあります.例えば複写機やプリンタの用紙搬送の速度が性能に相当し,高速にすればするほど印刷時間が短縮し,一元的品質の満足度が向上します.用紙搬送速度を高くすること自体はローラを駆動するモータの設定を変更するだけですので簡単ですが,用紙搬送速度を高くすればするほど用紙詰まりのエラー率が高くなります.このエラー率が当たり前品質に相当します.エラー率が半年に1回であったものを年に1回に改善してもお客様の満足度がほとんど向上しませんが,一日に1回用紙詰まりエラーが発生するとお客様は文句を言うでしょう.このお客様が文句を言うエラー率が機能限界です.
  *エラー率は大量のサンプルを使う非効率な評価なので,品質工学では機能に着目した評価をします.

光ディスクやプリンタのデータ書き込みに使うレーザーのパワーも高ければ高いほど記録速度が向上するので性能に相当しますが,レーザーの光パワーを高く設定すると劣化が早まり,記録に必要な光パワーが得られなくなるまでの時間が短くなってしまいます.10年間の使用で壊れても文句を言うお客様はほとんどいませんが,半年で壊れたらほとんどのお客様は文句を言います.これが当たり前品質であり,長期使用しても光パワーの低下が少ないことをロバスト姓が高いと呼びます.

このように性能とロバスト性はトレードオフ関係にあるケースが多いのです.よって,お客様満足につながる一元的品質を確保するためには事前にロバスト性を確保しておく必要がありますが,ここに二つの壁が存在するのです.一つは性能とロバスト性を両立確保することは,ロバストを犠牲にして性能だけを確保すること,つまりチャンピオンデータを出すことに比べて技術的な難易度が相当に高くなるということです.私が経験したあるデバイスの技術開発では構造や工法の変更を10回近く繰り返してようやく性能とロバスト性を両立させることができました.この間に2層膜からスタートして最終的には7層膜構造のデバイスを考案して事業化を成功させることができたのです.2層膜に比べると7層膜方式は構造が複雑ということだけではなく,動作原理も複雑で技術的な難易度は相当に高いのものとなりました.性能とロバスト性を両立するためにはデバイスやモジュールの構造や工法を大幅に変更する必要があるケースが多いことが1つ目の壁です.

もう一つの壁は性能とロバスト性を両立確保するための期間を最初からスケジュールとして確保しておくことです.多くの技術開発では最初に性能確保を実現し,その後に信頼性評価等のロバスト性評価を実施して問題が顕在化した後に対策するというスケジュールとなっています.小さな変更による事後対策で性能とロバスト性の両立確保ができればよいのですが,構造変更や工法変更が必要なケースが問題です.技術開発の終盤では構造や工法を変更する余裕がないので,技術開発の完了を大幅に遅延させるか,性能ダウンで製品設計に入るしか選択肢がなくなってしまうのです.このようなことを避けるためには技術開発の初期に性能とロバスト性を確保する十分な期間を設定することが必要です.LIMDOW-MOの技術開発完了までの期間は約1年半でした.性能とロバスト性の両立確保を目標として設定し,その期間を最初からスケジュールに反映させることが技術開発を成功させることにつながります.この急がば回れのアプローチは技術開発の進め方の変更ですので,技術者ではなくマネジメントの課題と言えます.


2020年7月9日 17時21分08秒 (Thu)

Next Normalに向けたモノづくりDX 東洋経済新報社主催

2020.07.08に表題のオンライン講演が開催されました
その聴講メモです

◆ポイント
・MaaS 
  電車、バス、飛行機、自動車。・・・、自転車など
  人が移動する手段を統合し、全体最適化する
 Googleのようなプラットフォーマーがお客様とメーカーの間に入って全体をコントロールする.そこに付加価値を生み出す.中心デバイスはスマホ.自動車は所有から移動システム全体の中の1つへフィンランドのヘルシンキで先行実験.
     自動車産業がない国ほど取り組みやすい
     例外はドイツ、中国であろう ⇒ 細川感想 
     日本ではトヨタが東富士の研究所跡地に構築

・CASEによる車づくりの変化
  4年前にダイムラーが提唱 ⇒ドイツの戦略性は脅威
  C:インターネット接続
  A:車内空間の拡大 乗って過ごすビーグル 移動する部屋へ
  S:用途、場所に応じた形状、性能の開発
  E:ノイズ音への注目

  Before 自動車メーカーが製品企画 ユーザーが購入
  After エコシステムの中での車の位置づけ その位置づけでのVOCから企画へ
  
・Case Maasがもたらす世界観 afterコロナ
   人が移動しない モノが移動
   自宅周辺が移動圏
   移動の分散化、多様化
   移動の体験価値の高まり(感染リスクをとってまで移動)
  
◆全体を通じての質問コーナーで細川からの質問と回答
Q:
デジタル技術で顧客データを入手し,顧客起点で製品開発することには賛成ですが,そもそもお客様が存在しない新規市場では顧客データも存在しません. 新規市場への参入のためには顧客のニーズを創造的に掘り起こすしかないと思いますが,いかがでしょうか。

A:
市場投入した後のRaw Voiceを早く取りに行って商品開発へのFeed Backを早く回す
まずはスタートアップしてお客様の声を集める
新技術 仮説で試行錯誤 実証実験的に それがスタート 
それをタイムリーにFeed Backする

VOCを創造する福原流QFDはまだまだ日本では一般的ではないようです

2020年7月5日 16時23分30秒 (Sun)

日本の製造業が国際競争力を低下させてしまった理由

品質工学会と品質管理学会の共同研究会の一つのWG-2では新しい技術開発プロセスの構築を目指して様々な議論を継続しています.その中で,かつてはJapan as No.1と言われた日本の製造業が国際競争力を低下させてしまった大きな要因はバブル崩壊後の欧米流合理主義経営の導入にあるという認識が共有化されました.もっと正確に言えば,本来は一時的な緊急対応で終わらせるべき短期に利益を追求する合理主義的な経営を現在まで継続してしまったことが要因であろうということです.バブル崩壊までの日本は短期的な利益よりも中長期視点での人材育成を重視する経営を継続してきました.人の改善力と創造性が価値を生み出す原動力であり,人財が活躍した結果として売り上げや利益が拡大するという考え方でした.しかし,今は長期間の人財育成よりもコストをかけずに利益確保を優先する考え方の方が優勢になっています.そして,半年かつ個人単位で成果を出すことが要求される目標管理制度も合理主義経営のマネジメントツールとしてバブル崩壊後から次々と導入され,現在に至っています.1990年代初めのLIMDOW-MOの技術開発では,約2年間にわたりチームプレーで大きなゴールを目指す活動を実施しましたが,今のマネジメント環境下では2年間も失敗を繰り返すような活動は許容されないでしょう.

その一方で,欧米企業は1980年代に日本流の品質管理などを学び,それを欧米流にアレンジしたシックスシグマ,リーンシックスシグマ,そしてDFSS(Design for Six Sigma)を確立し,幅広く活用しているのです.これらのマネジメント技法はかつての日本のように人の改善力や創造性の向上を目指して活用されています.DFSSのPughや公理設計などは昔のホンダのワイガヤやソニーの自由な文化をしくみとして実現したものと解釈できます.1990年代を境い目にして日本は古い欧米の合理主義に戻り,欧米は合理主義をベースにしながらもかつて強かった頃の日本企業のマネジメントを取り入れて進化しているのです.この逆転現象が日本企業が交際競争力を失った要因の一つであることは間違いないでしょう.

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TETSU
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品質工学でブレークスルー
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