2021年1月 アーカイブ

2021年1月23日 15時14分01秒 (Sat)

狩野モデルで説明する品質工学 その5

次にエネルギー変換効率を“機能レベル/消費エネルギー”と定義し直してみます.
こう定義すると燃費が向上したけど加速性能が落ちてしまっては改善とは言えなくなります.そしてこの定義による自動車のエネルギー変換効率はここ10年で10~30%くらいかと思います.

このエネルギー変換効率の進歩の遅さと環境志向が相まって燃費が最重要なVOCになったという理解も可能かと思います.加速の性能向上なしに投入エネルギーを減らすこと自体が価値を持つ製品,それが自動車ということになるわけです.

一方でHDDのエネルギー変換効率の向上を見ると桁違いです.
HDDでほしいものは記録容量です.
1995年のHDDのエネルギー変換効率=100(MB)/X(mW)
2020年のHDDのエネルギー変換効率=1(TB)/X(mW)

1995年レベルのエネルギー変換効率で1(TB)を実現するためには膨大な電力が必要となり,消費電力が重要なVOCとなるでしょうが,10の何乗倍もエネルギー変換効率が上がっているので消費電力は重要なVOCにはならないわけです.

エネルギー変換は万能であるという考え方もありますが,実際の業務への適用では以下の2点を考慮する必要がありそうです.

・エネルギー変換効率のVOCとしての重要度
・エネルギー変換効率がトータルなロバスト性の改善につながるか

その他,目的機能,基本機能,エネルギー変換の関係などまだ一般的に定義されていない興味深いテーマもありますが,それについては別の機会に・・・

2021年1月23日 14時45分08秒 (Sat)

狩野モデルで説明する品質工学 その4

次にエネルギー変換効率をVOCの視点で考えてみます.

自動車の燃費を一般製品に拡張すると消費電力となります.
ここで一つ気づくことは,家電など一般製品でも消費電力はVOCの一つであることは間違いありませんが,
その要求の大きさは自動車ほどは大きくはないということです.
おそらく消費電力の少なさだけを売りにしてもお客様満足向上にはつながらないでしょう.

さらに言えば,
そもそも燃費を一元的Qにしたところに問題ないかという疑問も湧いてきます.
少なくとも技術的な品質定義では“ほしいもの”を一元Qにすべきではないかと思いますが,
電力やガソリンなどは目的機能を得るために投入される消費エネルギーなのでよく考えるとこれらは“ほしくないもの”です.

自動車のほしいものは,加速,曲がる,減速,
つまり速度ベクトルを変化させることが本質的なほしいものであり,
それを一元Qとして定義するのが本筋ではないかとも思うわけです.

2021年1月23日 14時18分17秒 (Sat)

狩野モデルで説明する品質工学 その3

次にレーザーの場合について考えてみます

レーザーにおけるほしいものyはパワーです
そしてパワ一は当然一元Q
電力投入を増やすことでパワーアップさせることは簡単ですが,同時に耐久性が落ちます
よってロバスト性向上がパワーアップの原動力となります 
ロバスト性自体は必要以上に高めてもお客様満足は向上しないので当たり前Qです
よって両者はここでもトレードオフ関係になります

ここまでは,,
レーザーのパワーアップの手段を投入電力(入力M)を高くすることとしたのでトレードオフになりましたが,
その手段をy=βMのβを高めることとすればエネルギー変換効率の向上となり,
熱などの無駄なエネルギーへの変換が減るので耐久性とパワーアップの両立に向かいます
そしてこのエネルギー変換効率を意味するβは一元Qです
同じレーザーでもこのように考えると自動車の燃費と同じ構図になってきます

このようにロバスト性をエネルギー変換効率として定義すると一元的Qとなり,
ほしいものyとのトレードオフ関係が解消されます

2021年1月21日 17時29分53秒 (Thu)

狩野モデルで説明する品質工学 その2

一方で,私が技術開発に関わった複写プリンタや光ディスクでは一元Qが性能、当たり前Qがロバスト性という関係が以下のように成り立ちます

複写プリンタの印刷速度
これは明らかに一元Q 用紙搬送速度UP自体はモータ設定変えるだけなので簡単
でも用紙搬送速度を高くすればするほどジャム率が増える
ジャム率は当たり前Q 
1回/年を1回/2年に低減しても満足度向上ほぼなしなので
そして両者がトレードオフすることが重要
つまり用紙搬送速度UPさせて印刷速度UPさせる原動力は用紙搬送のロバスト性を高めること

光ディスクや磁気ディスク(HDD)も同様
一元Q:記録容量 マークを小さくすること 
マークを小さくすればするほど高温でマーク形状が乱れるなどの不安定性が増大
よってマークのロバスト性確保=当たり前Qの確保が記録容量UPの原動力



2021年1月14日 20時00分22秒 (Thu)

狩野モデルで説明する品質工学 その1

品質工学会の技術向上委員会で品質工学とその関連分野の用語を定義する活動をしています.その活動の中で狩野モデルが用語定義の対象となり,品質工学との関係の説明を含めて狩野モデルを定義することになりました.狩野モデルに関しては品質工学との関係を含めて自分なりの定義を持っていたのですが,改めて考えてみると視点の違いによって狩野モデルの説明が変わることに気づいたのです.それをこのブログで共有化したいと思います.

一元品質,当たり前品質,魅力品質の3つを簡潔に定義することはできます.
例えば以下のように
一元:充足度に応じて満足度向上 カタログスペックなど
当たり前:充足度を向上させても満足度向上しないが,充足度が不十分だと不満足となる 不具合など
魅力:充足されていなくても不満とはならない 充足されると満足度が向上する 新機能実現など

ここで,私の仮説は,
「一元が感度や性能,当たり前がロバスト性で両者はトレードオフする」
ですが,これがどうも違うケースもあるなと気づきました.

その例が自動車の燃費です.
燃費が良くなればなるほどお客様の満足度が高まるので燃費は一元品質です.
それを実現する手段はエネルギー効率を高めることです.品質工学的にはy=βMのMをガソリンの化学的エネルギー,yを回転エネルギーとしたときのβを高くすれば燃費が改善します.

このβを高めれば高めるほど満足度が向上するのでβも一元的品質であり,βと燃費はトレードオフしません.
では自動車のエンジンの当たり前Qは何か???
複写機などの画像製品,光ディスクやハードディスクなどの記録デバイスと自動車では何かが違うような???





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