2021年12月 アーカイブ

2021年12月8日 13時47分22秒 (Wed)

機能発想の起点CS-T法

 前々回のブログで機能を起点に形を考案するという話をしました.このプロセスの成功例として,品質工学会でも多くの方々に大きなインパクトを与えた事例がマツダのスカイアクティブエンジンの技術開発です.通常の自動車開発では燃費,馬力,トルクなどのカタログスペックを大目標として技術開発や製品設計を実施しますが,熱効率という本質的な機能を大目標に設定し,熱効率の目標値を達成するための下位機能の因果展開を最初に実施しています.下位機能がCS-T法の現象説明因子に相当します.例えば,着火速度,燃料粒子径,シリンダー内部での化学反応などです.これら現象説明因子のあるべき姿を定義した後に,圧縮比,空燃比などの本質的な制御因子の具体的な水準設定に入ります.

 まさに機能を起点とした理想の技術開発プロセスですが,このプロセスを成功させるためには大前提があることを忘れてはいけません.それは十分な技術蓄積です.長年にわたる経験ベースの技術を蓄積した人財がいない場合,このプロセスを可能にするための技術蓄積の期間が必要なのです.そのゴールのイメージは次のコメントから垣間見ることができます.
「データには現れないエンジンの訴えに愛着を持って謙虚に耳傾ける.そうすると,データに込められたエンジンの声が聞こえてくる.文字には表れないデータの意味が見えてくる」 
出展 ”つくりたいんは世界一のエンジンじゃろうが”  羽山信宏 日刊工業新聞社

 このレベルにいかに早く到達するかが本質的な課題と言えます.特に従来にない機能やダントツ性能を実現する新規技術の技術開発ではこれが最大の課題なのです.いきなり形から入って試作品を作り,出口の見えない部分最適のデバックサイクルを続けるよりも,機能を実験的に見出すアプローチの方が結果的には早くゴールに到達するのです.それがCS-T法を起点とした技術開発プロセスです.詳細については商品開発プロセス研究会WG2「創造性と効率性を両立した技術開発プロセスの構築」の研究成果として数か月後に論文で公開される予定です.ご期待ください.
 
 

2021年12月1日 13時48分38秒 (Wed)

CS-T法とModel Based Development

 一つ前のブログで品質工学とMBDは根本的な部分で共通性があることを述べました.2015年に品質管理学会の学会誌に論文掲載され,品質技術賞をいただいたCS-T法とMBDの共通性についても触れたいと思います.
 
 CS-T法は目的機能を目的特性としたパラメータ設計にT法パートを追加し,そこに改善メカニズムを記述する因子である現象説明因子を取り上げます.実験計画はパラメータ設計の拡張版のようにも見えますが,CS-T法の狙いは最適化ではなく,目的特性と現象説明因子の因果関係を把握し,改善メカニズムを理解することによって,新たなシステムや制御因子を発想することです.直交表の役割は少ない実験回数で現象説明因子と目的特性の値を大きく変化させるサンプルを作成するためであり,解析対象にはしません.よって十分な精度でT法解析が実施できれば直交表実験を途中で打ち切ることも可能です.

 CS-T法によって性能やロバスト性を確保するための新たなシステムや制御因子を発想する的確性を向上させることが可能となります.その狙いはMBDとまったく同じなのです.MBDでは目的機能を実現する理想の状態を源機能として定義し,源機能として定義された理想の状態を実現する形を創造するとしています.ところが,技術蓄積が少ない技術開発段階では目的機能と因果関係を持つ源機能を定義することが困難な場合も多々あります.そのような場合にCS-T法が有効となります.MBDにCS-T法を取り入れることによって,源機能を実験的に追及するアプローチです.

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2021年12月1日 9時20分39秒 (Wed)

機能から形を創る

 11月13日に開催された品質管理学会の大会で,商品開発プロセス研究会のWG2「創造性と効率性を両立した技術開発プロセスの構築」の活動の成果である「技術開発プロセスを設計するプラットフォーム"T7"]を構築するに至る経緯を報告しました.その中で,Model Based Development(MBD)と品質工学の共通性についても触れました.今回はその内容を共有します.

 一般的にMBDはシミュレーションモデルを活用した技術開発や製品設計と認識されていますが,その本質は機能を起点として形を創造するプロセスにあります.例えば自動車の場合のお客様のニーズの一つが燃費ですが,燃費という目的機能を改善するためにはシリンダー内部での燃焼反応の理想の状態を定義することが重要であり,その理想の状態を源機能と呼んでいます.源機能は「~を~する」というような言葉で表現できますが,それを計測可能な特性値で定義すると品質工学の基本機能になります.用紙を様々な形状に折りこむマシンの場合であれば,用紙を折りこむ理想の挙動が源機能であり,そこに計測可能な特性値を与えると品質工学の基本機能となります.基本機能の改善が結果的にお客様のニーズである目的機能(頂上機能)の向上につながります.自動車の場合であればほしいものは加速ですから,できるだけ少ない燃料消費で加速を得ることがお客様の満足向上につながります.それを実現するのが基本機能です.そして理想の源機能,あるいは基本機能を実現する手段が形状,寸法,材料種類などの制御因子です.統計的な因果関係は,制御因子→基本機能→目的機能ですが,技術的には目的機能→基本機能→制御因子の順番で発想します.
 
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