2022年11月 アーカイブ

2022年11月21日 14時14分31秒 (Mon)

組織力が魅力品質を生み出す  ”第15回品質工学技術戦略研究発表大会に参加して”

 今回の大会は2つの招待講演、3つの研究発表と最後にパネルディスカッションという構成でした.どの発表も技法活用の個別事例というレベルではなく,経営課題や事業課題を達成するために,全体プロセスや仕組みの中でいかに技法を活用したかという視点が中心となっており,大変興味深く聴講することができました.その中でも個人的に最も大きな気づきがあったのがマツダの安達様のご発表です.以下に感想を述べさせていただきます.

テーマ お客様の輝きにつなげるマツダのモノづくり
~魂動デザイン実現に向けたプレス金型製作プロセス革新~

 生産技術の領域はお客様の声であるVOCから最も距離が離れた分野であると思われる方が多いと思います.設計から受けた図面に書かれた寸法などの要求特性をいかに早く,正確に実現するか,それが生産技術の役割という考え方です.ところが実はそうではないということを改めて感じさせてくれたのが今回のマツダの発表です.デザイナーとそれを実現する生産技術はトレードオフ関係にあります.例えば,現状の工法ではデザイナーが発想した形を実現することが困難であり,新たな設備導入が必要となるようなケースです.そのような場合,デザイナーが発想した形を実現するための設備投資は本当に販売台数の増加につながるのか,というような議論になることが多いのではないでしょうか.このようなトレードオフを前提とした議論が部門間の摩擦へとつながってしまうのかもしれません.

 ここ数年でマツダ車の魅力度が向上していると感じている方々が多いと思います.その成功要因は様々あると思いますが,中でも大きなものの一つが組織力であることを今回の安達様のご発表から感じ取ることができました.マツダでは,ややもすると妥協点を見出す関係になってしまうデザイナーと技術者が融合して,共通の価値を目指して創造活動を実現しているのです.このベクトルを合わせる原動力が“魂動デザイン”というコンセプトです.魂動デザインについて様々な側面から説明がありましたが,それは潜在ニーズのVOCであり,狩野モデルにおける魅力品質を実現するということであると理解することができました.
【品質工学】品質工学による技術開発1-1~手法から技法 仕組みへ~:Technology Development with Robust Quality Engineering1-1 - YouTube
この動画の中で,魅力品質を実現するためには,その前提として当たり前品質であるロバスト性を高いレベルで確保しておく必要があるという説明をしております.マツダの取り組みは,組織力によって魅力品質と当たり前品質のトレードオフを乗り越えて,両者の両立を実現した素晴らしい事例です.

また“魂動デザイン”というコンセプトの下で部門の壁を超えて実現した組織力はQFDが目指している理想を実現しているとも感じました.QFDの狙いは複数ありますが,その中の一つが部門間の協業を促進するコミュニケーションツールという位置づけです.“魂動デザイン”というVOCを意思決定の起点として,デザイン部門と生産技術部門が連携する.これによって,技術者と技能者のモチベーションが高まり,それが10μmレベルの精度が要求される難易度の高い生産技術を実現した原動力であったと思います.

これまでの品質工学は市場で様々な使い方をしても機能を維持するロバスト性を確保することを目指してきました.今後はさらに一歩進んで,魅力品質や一元品質でお客様の期待を超えることを目指す.そういう時代に入ったと実感しました.

 

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