2023年1月 アーカイブ

2023年1月23日 9時43分14秒 (Mon)

特別企画シンポジウム成功裏に終了

1月20日に特別企画シンポジウムを開催し成功裏に終了することができました.参加者は119名となり当初の予定を大幅に上回り、多くの方々に技法融合に関する最新情報と気づきを与えることができたと思っております.今回のイベントはTRIZ協会と品質工学会の両団体による共同開催という方向で昨年4月から企画立案をスタートし,大きな方向性から詳細プログラム、当日の運営まで約十カ月にわたる関係者の協力をいただくことによって実現したものです.皆様のご協力がなしには本イベントを成功に導くことはできませんでした.改めて本イベントに協力いただいた両団体の皆様に感謝申し上げます.
品質工学会 企業交流会 (rqes.or.jp)

本イベントを企画,参加しての感想を記します.本イベントの狙いは,品質工学分野だけではなく,他分野の様々な技法にもフォーカスし,それら各技法を大きな方向性の下で融合させることによって,より大きな成果を実現できることを示すことでした.TRIZ協会と品質工学会からのプレゼンやパネルディスカッションがその方向で違和感なく融合できるどうかが今回のイベントの成功,不成功を分けるポイントでした.結果的には両団体からのプレゼンやパネルディスカッションは分野の違いをまったく意識させない自然な流れの中で進み,参加者には新しい方向性に関する最新情報と新たな気づきを与えることができたと思っております.

この自然な流れが実現した要因についても述べてみたいと思います.技法融合で実現する基軸はVOC,創造,評価の3つであり,各々にQFD,TRIZ,品質工学が対応しています.これら3つの基軸が互いに交わることなく独立したものであったとすると今回のイベントの違和感のない自然な流れは実現できなかったでしょう.実はこれら3つの分野には互いに親和する共通の要素が存在すると思うのです.従来の品質工学の狙いは広い意味での評価でした.この評価には機能性評価によるロバスト性の予測だけではなく,ロバストパラメータ設計によるシステムのトータル評価も含みます.この評価とVOCを結ぶ懸け橋が損失関数と目的機能であろうと思うのです.両者とも技術起点ではなく顧客起点を重視しています.

次に評価と発想について考えてみます.これまでの品質工学のメインの技法であるロバストパラメータ設計の狙いはシステムの効率的な最適化を通じて,ロバスト性と性能の両立性を評価することでした.考案あるいは選択したシステムの限界を短期間に把握し,目標とのギャップを認識した上で,そのギャップを埋める創造活動に移行すること.つまり最適化と評価のための無駄な試行錯誤を排除し,作り上げた時間をシステム考案などの創造活動に充てることが狙いであったのです.ただし,従来のロバストパラメータ設計では創造活動のために有効な技術情報の提供ができないという限界がありました.その限界を突破し,実験を通じて創造のために有効な技術情報を効率的に得る技法がCS-T法です.評価を基軸とする品質工学と創造を基軸とするTRIZの懸け橋がCS-T法であると言えます.

最後にVOCと創造ですが,この懸け橋がTRIZの9画面法です.9画面法によって将来の市場やお客様のニーズを予測することができます.その予測した市場から実現すべき技術手段が見えてきます.5年から10年先に向けての技術開発戦略を策定するために有効な技法が9画面法です.

このようにVOC,創造,評価の3つ基軸の間の懸け橋となる技法が品質工学とTRIZの中に存在しているのです.これら懸け橋となる技法が今回のイベントの各発表の中で取り上げられたこと.それがイベント全体の自然な流れを生み出したのだと感じています.
 

2023年1月4日 15時33分28秒 (Wed)

2023年 年初所感

皆様、明けましておめでとうございます.
昨年も多くの方々に本HPに来訪してくださいました.この場を借りて感謝申し上げます.
今年も引き続きよろしくお願いいたします.

今回はこれまでの学会活動を振り返り,今後への想いを述べさせていただきます.

品質工学会の理事を拝命してから4年という月日が流れました.その間に日本品質管理学会と品質工学会の共同研究会「商品開発プロセス研究会」の幹事として活動を継続し,WG2の研究テーマである「創造性と効率性を両立した技術開発プロセスの構築」の成果として,
「技術開発プロセスを設計するプラットフォーム”T7”」
を提案することができました.
T7については本HPでも概要を紹介しております.さらに詳細については下記を参照いただければと思います.
 「技術開発プロセスを設計するプラットフォームT7の提案と検証」品質工学, Vol.30, No.2
また,本HPの”新連載 品質工学による技術開発 無料動画付き”でも関連情報を継続発信しておりますので,参考にしていただければと思います.

T7は技術開発を効果的に実行するための仕組みと言えます.これまで品質工学会や日本品質管理学会における研究報告のほとんどが個別の手法や技法の深掘り,あるいは進化を目的としたものでした.個々の手法や技法の精度や効率性を高めることは重要ですが,それだけで日本製造業が抱える大きな課題を達成できるのかという疑問があります.欧米での品質に関わる研究動向に目を転じると,個別の手法や技法ではなくQFD,TRIZ,タグチメソッドなどの各技法を融合した仕組み論を展開していることに気がつきます.このような海外の状況を踏まえると,今の日本製造業は欧米の良いところを学び,それを日本流にアレンジして自分達のものに仕上げていく活動が必要であり,それなくして日本製造業が再び世界のフロントランナーとして復活することは極めて困難であると言わざるを得ないと思うのです.

米国で市民権を得ている技術開発の仕組みであるDFSS(Design for Six Sigma)をベンチマークし,それを超えることを目指して構築した仕組みがT7です.今年はT7を多くの企業様に知っていただき,活用検討の最初の年に位置付けたいという想いを持っていますが,その方法については過去の反省が必要と考えています.2000年代に多くの日本製造業がトップダウンで品質工学を導入しましたが,現在でも有効活用が続いている組織あるいは企業はわずかしかないという現実があります.その主要因は手段の目的化にあったのではないでしょうか.何のためにの目的が曖昧なまま全員パラメータ設計を使えというようなやり方では成果は期待できません.なぜならば機能性評価,パラメータ設計,CS-T法は教科書通りに実施すれば成果が出るものではなく,課題に応じたアレンジや工夫が必要な技法だからです.そこが統計的品質管理などの手法との大きな違いです.

手法には正しい答えが存在します.正しい手順で実施すれば誰でも共通の正しい結果を得ることができます.よって,手法は集合教育で正しい手順を学んで全員が業務適用することで成果を期待できます.技法には正しい答えは存在せず,役立つ結果を得ることが目的です.役立つ結果を得るためには,実践経験を通じたスキルアップが必要です.つまり技法のスキルアップはOJTを通じて実現するしかないのです.急がば回れのアプローチになりますが,技法を活用できる組織力を実現しなければ技法活用による継続的な成果は難しいのです.

中長期視点での人財育成が組織力を作り,それが継続的な成果の原動力となるのですが,そのような大きな取り組みはボトムアップの草の根活動では限界があります.やはりトップダウンが必須ではあります.しかし,ここは繰り返しにはなりますが,トップダウンはやり方を間違えるとマイナス効果を生んでしまいます.トップダウンを成功させるためには中長期視点での組織力向上がなぜ必要なのかを説明する上位の目的が必要です.その目的は経営課題であるべきと考えます.大きな経営課題達成の手段として組織力向上があり,組織力向上の手段にT7を位置付けることが日本製造業復活の鍵になると考えています.これはかつて日本製造業が生み出したTQMの中のマネジメントの仕組みである方針管理を技術開発プロセスに導入することにほかなりません.そのような狙いの下で,現在WG2では方針管理による技術開発プロセスのマネジメントについて研究を継続しています.この研究活動には品質管理の実践分野の世界的第一人者である福原先生にもアドバイザーとして参加していただいております.T7や方針管理による技術開発プロセスのマネジメントについては,何らかの形で今年中に報告したいと考えております.

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