いろいろな情報

2023年6月12日 14時14分22秒 (Mon)

KPIと管理項目

KPI(Key Performance Indicator)と管理項目はどちらも経営課題のような最終的な目標を達成する過程での中間的なプロセス指標という意味では共通ですが、その狙いが大きく異なっていると感じています.KPIは評価をすることに主眼が置かれている一方で、品質管理分野での本来の管理項目は良い行動を促すことに主眼が置かれていると思います.

例えば設計段階での手戻り件数を大幅に削減するという部門目標が設定された場合、それを達成するために様々な施策を実施する必要があります.その中の一つにDR(Design Review)での品質確保というテーマが設定されたとします.DRの良し悪しとどういう物差しで測るかを考えることになりますが、ここで評価の視点と良い行動を促す視点では指標が大きく異なり、結果として設計段階での手戻り件数の達成レベルにも大きな影響を与えることになります.

多くの企業では半年単位の目標管理の仕組みが導入されていることもあり、短期で計測可能な指標であるKPIが設定されています.DRのKPIとしては、例えば指摘件数などが一般的でしょう.あるいは、設計段階での品質作りこみであれば、パラメータ設計の実施件数などもKPIとして使われるケースが多いと思います.ここで、よく考えなければいけないことは、DRの指摘件数は多ければ多いほど良い望大特性なのか?ということです.見当はずれな指摘に対応したとするとそれは無題な時間を費やしてしまったことになります.パラメータ設計も同様で、過去の知見のある制御因子を取り上げて最適化してもさらなる改善は期待できません.時間の無駄になってしまいます.

では良い行動を促す管理項目な何かですが、例えばDR指摘漏れ数などです.指摘すべきことが漏れなく指摘する意識を持つことでDRの質が向上し、設計段階での手戻り低減が期待できます.ところが、指摘漏れ数はリアルタイムでの計測は困難です.設計完了後の市場投入段階で、指摘が漏れていたとわかるのが普通です.つまり、実施と結果にタイムラグがあるのです.このタイムラグが目標管理制度と管理項目の相性を悪くさせています.

上流で性能とロバスト性を両立確保するロバストパラメータ設計も同様に実施と効果検証にタイムラグがあります.ロバストパラメータ設計の回数は制御因子の数などのKPIはリアルタイム計測が可能なので目標管理制度と相性が良いですが、事業化成功などの最終目標の達成可能性が高まる指標とは言えません.例えば、製品設計段階で必要となるであろうロバスト性と性能の両立範囲などを管理項目することで最終ゴールに向けて質の高い活動が可能となりますが、その両立範囲を設定し、定量的な指標にすることは簡単ではありません.工夫も必要なるでしょう.

このようにKPIと管理項目は似ていますが本質的な違いがあります.


 

2022年9月3日 14時27分37秒 (Sat)

第18回 日本TRIZシンポジウムに参加しました その3

QFD,TRIZ,タグチの融合についても思うところがあったので述べてみたいと思います.この3つの技法の融合効果の可能性についてはずいぶん前に提案されていたことで新しいことではありませんが,その後現在に至るまでこの領域の研究や実践が進んでないのが実態であり,この3技法以外も含めたトータルな技術開発プロセスの構築が大きな課題であると認識しています.その成果の一つが本HPでも紹介している「技術開発プロセスを設計するプラットフォームT7」です.ここでは,T7の応用の方向性の一つとして,この3技法の新たな融合の可能性について述べてみたいと思います.

従来のQFD,TRIZ,タグチの融合は以下のステップをイメージしていました.
Step1  QFDでVOCを選定
Step2  TRIZでVOCを実現する技術手段(システム)を考案
Step3  タグチでシステムのロバスト性を最適化

このプロセスではTRIZの次にタグチ実施となっていますが,その前提にはある程度の技術蓄積があるということがあると思うのです.TRIZ活用の出発点で,問題の本質を見える化するために技術的な矛盾を定義しますが,技術的な矛盾が定義できる状態にあるということは,その技術に関してある程度以上にメカニズムを把握していることが前提となるかと思います.別の言い方をすると,CS-T法における現象説明因子と目的機能の因果関係が把握できているということです.これができるのは既存製品の問題点を解決するケースであり,問題解決では上に示した3つのStepが有効になるのではないかと思うのです.

新規技術の技術開発の初期段階では,目的機能を実現する下位機能(公理設計のFnctional Requiement)が十分に考案されてない,あるいは重要な下位機能が特定されていないケースがほとんどです.この段階での活動の質が技術開発の成功率を決めるのですが,この段階で問題の本質を誤って定義してしまうと技術開発の方向性を誤ってしまうことになります.それを避けるためにも最初にCS-T法を実施し,性能とロバスト性の改善効果のメカニズムを把握し,そこから現象説明因子領域で矛盾を定義する.その後にTRIZを実施することで,新たなシステム考案の的確性が高まると思うのです.ニコン時代のLIMDOW-MOの技術開発やリコーでのVCSELレーザー開発での経験からもこのように思うのです.来年1月に開催される日本TRIZ協会と品質工学会の共催イベントで情報共有したいと思います.
 

 

2022年9月3日 14時21分31秒 (Sat)

第18回 日本TRIZシンポジウムに参加しました その2

今回のシンポジウムでは,特別講演で三菱電機の平岡様から「20年以上続く冷蔵庫の機能 切れちゃう冷凍の開発」というタイトルでのプレゼンがあり,トップダウンとボトムアップのVOC発想に関して,新たな気づきがありましたので,それについても触れてみたいと思います.冷蔵庫の提供価値はいかに多くの冷凍食品を長く保存するかであり,できるだけ大きな冷凍容量の確保を目指すことが一般的です.もちろん多くの食品を冷凍できることは価値ではありますが,それは顕在化されたニーズであり,各社とも同様に技術開発しているので,どうしても横並び競争になってしまいます.

そこで,表面的なニーズではなく,本質的ニーズを発想し,新たな価値提供を実現したという点が素晴らしいと感じました.ポイントは,冷蔵庫の提供価値は時間を創ることであると再定義し,冷凍保存だけではなく,料理工程すべてを価値提供対象としたことです.そして,冷凍保存した肉などの食材を取り出した後のシーンを創造した結果として,”肉を切る”という工程に潜在ニーズがあると発想し,ほどよい凍結で凍っていても包丁で切れる冷凍技術を完成し,商品化したという流れが素晴らしいと感じました.

内容的にはトップダウンの要素が強調されていたので,それに関して質問をさせていただいたところ,実際には市場の声などの情報を活用したボトムアップ活動をベースとして,「時間を創る」という新たな価値を再定義したとのことでした.この事例からもボトムアップの福原流QFDとトップダウン技法を融合した製品企画の可能性を感じることができました.

2022年9月3日 13時19分29秒 (Sat)

第18回 日本TRIZシンポジウムに参加しました その1

品質工学会からの代表として昨年に引き続き今年度も日本TRIZシンポジウムに参加しました.
9月1日と2日の2日間で,チュートリアル,2件の基調講演と特別講演,
一般発表14件の発表があり,参加者は約40名と品質工学の大会に比べると少ないですが,その分内容の濃い議論が展開されていると感じました.今回のシンポジウムで印象に残ったことを述べてみたいと思います.

参加して印象に残ったことの1つ目は,顧客ニースを重視していることです.これまでTRIZは技術手段の発想技法と思っていましたが,それだけではなく未来のニーズを考案する9画面法というアプローチがあり,実務活用されていると聞いて素晴らしいと感じました.チュートリアルで9画面法を学びましたが,福原流QFDと融合することで,より効果的になると直感したので,それについて述べてみたいと思います.

福原流QFDはボトムアップ型で,お客様の生の声であるRaw Voiceを真のニーズのVOCに変換し,変換した多数のVOCを親和図法で抽象度を上げてツリー図に整理します.さらに技術特性との因果関係を二元表で整理し,品質表を完成させます.一方,9画面法はトップダウン型で数年後の大きなニーズを創造します.

両社は異なるアプローチなので,技法レベルで融合しても新たな効果は得られないかもしれませんが,製品企画段階で両者の結果を融合する効果は大きいと思います.福原流QFDで完成させた品質表を活用した製品企画では,品質表にある多数のVOCの中から次世代の製品などで重点化すべきVOCをアセスメントで決定します.具体的には競合状況や関係者のアンケートなどを実施して,重点VOCを決定し製品仕様にします.このアセスメントの項目の一つに9画面法で発想した将来のニーズを追加することで,将来まで見据えたよりよい製品企画になると思います.




 

2021年8月15日 16時19分25秒 (Sun)

第32回企業交流会 講演及び発表の概要

(1)特別講演 「日本一労働時間が短い“超ホワイト企業”は利益率業界一」 
未来工業㈱ 社長 山田雅裕

成果主義禁止,ノルマ禁止,ホウレンソウ禁止,上からの管理をなくして徹底的に社員を信頼して任せる,等々,多くの企業が米国流の合理主義マネジメントを取り入れる中で真っ向から逆の経営をされて大きな成果を上げておられる未来工業㈱の経営やマネジメントについて山田社長から語っていただきます.多くのヒントや気づきが得られること間違いなしです.


(2)基調講演 「新たなビジネスの創出を目指し、車載電装品の提案型ビジネスの構築と顧客満足の実現を!」
アルプスアルパイン㈱ 元技術顧問 澤田謙次 

 1970年代に起こった激動のオイルショックは,アルプスアルパイン(株)(旧アルプス電気(株)、ALAPと省略する)にとって,民生用部品メーカーからの大きな変革を求められる時代の始まりであった.その中で自動車用車載電装品という新たな市場に参入するにあたり,自動車メーカーとユーザーの満足に根差した商品開発とビジネスの構築により,その後のALAP売上増に寄与することが出来た.その実現におけるビジネスプロセスの中で開発設計の立場で「顧客に満足頂ける商品開発と提案型ビジネスの実行」をどのように実行して来たかを現場で体感した立場でお話しする.
      

(3)事例1 「人の感性に訴える魚釣り用リールの究極の巻き心地を求めて
-基本機能による創造的開発の可能性-」
㈱シマノ 井上徹夫

 魚釣り用リールには,ドラグ性能,防水性などの様々な機能が求められ,特にハンドル巻き心地への
要求が高い.しかし,ハンドル回転時にはギヤ対のかみ合いから振動が発生し,その振動が大きい場合
はリールの巻き心地が悪化する.本報では,リール巻き心地の基本機能を,入力と出力のギヤ対回転角
の進み遅れであるかみ合い伝達誤差と定義し,この誤差を極限まで正確に計測することで全く新し
いギヤを創造した事例を報告する. 
 

(4) 事例2   「製品機能向上型開発から市場価値創出型開発への転換による新規市場創出活動」
リコーインダストリアルソリューションズ㈱ 成田博和

前身企業のリコー光学において,マイクロレンズアレイで液晶プロジェクターの明るさ向上にお役立ちし,会社を支える事業として一時代を築いてきた.さらに製品機能や生産技術のブラッシュアップによって新たな市場展開を試み続けてきたが,既存事業にとってかわるような新しい市場の開拓には至らなかった.そこで一度立ち止まって考え,マイクロレンズアレイの機能や役割を市場視点で見つめなおすことで新たな市場展開に光が見え始めた.その活動を紹介する.


(5)事例3 「コマツにおけるダントツものづくりとDXによる顧客価値最大化の取り組み」
Immersive Technologies Pty. Ltd.  浅田寿士

これまでメーカーは市場での生き残りをかけて徹底して品質を作りこむモノづくりに邁進してきましたデジタル革命により社会そのものが大きく変わろうとしている今メーカーは如何に顧客価値創造を行うべきでしょうかお客様が真に求められているゴールをサポートするためモノ・コトをデジタルの力でどう強化していくべきかについてお話しします


 

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TETSU
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品質工学でブレークスルー
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