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2024年5月30日 12時34分43秒 (Thu)
品質工学研究発表大会
6月27日と28日に開催される品質工学研究会発表大会でリコーグループから2件の発表があります
アブストラクトを掲載します
「T7を活用した技術開発プロセスの構築」
従来は前身機からトレースした設計をベースに改善やコストダウンのためのパラメータ設計や許容差設計を実施していたが、より大きな原価低減が求められている。そこで制御因子を発想して原価を創りこむ活動を実施するために、T7を活用して新たな技術開発プロセスを構築した。新たな技術開発プロセスとそのトライアル結果を報告する。
「CS-T法とベイズ融合による技術蓄積と最適化の同事実施」
CS-T法によって直交表実験を全行実施せずに現象説明因子(中間特性)を対象とした要因解析が可能となった。これによって少ない実験回数で改善効果のメカニズムを把握し、システムや制御因子を考案する技術開発活動の効率化が実現した。しかしながら実験対象システムの最適化を実施するためには直交表実験を全行実施する必要があり、最適化の効率化が課題であった。この課題を解決する方法としてCS-T法とベイズ最適化を融合した技法を提案する。
アブストラクトを掲載します
「T7を活用した技術開発プロセスの構築」
従来は前身機からトレースした設計をベースに改善やコストダウンのためのパラメータ設計や許容差設計を実施していたが、より大きな原価低減が求められている。そこで制御因子を発想して原価を創りこむ活動を実施するために、T7を活用して新たな技術開発プロセスを構築した。新たな技術開発プロセスとそのトライアル結果を報告する。
「CS-T法とベイズ融合による技術蓄積と最適化の同事実施」
CS-T法によって直交表実験を全行実施せずに現象説明因子(中間特性)を対象とした要因解析が可能となった。これによって少ない実験回数で改善効果のメカニズムを把握し、システムや制御因子を考案する技術開発活動の効率化が実現した。しかしながら実験対象システムの最適化を実施するためには直交表実験を全行実施する必要があり、最適化の効率化が課題であった。この課題を解決する方法としてCS-T法とベイズ最適化を融合した技法を提案する。
2023年9月16日 19時18分49秒 (Sat)
ロバストパラメータ設計と機械学習 その2 技術手段の発想
前回”その1”では品質工学の目的はシステムの評価であり、機械学習の目的は最適化であることを確認した上で,交互作用への対応力について筆者なりの意見を述べました.今回は取り上げた制御因子の水準を変えても目的特性の目標値を達成できない場合に取り得るアクションの質の違いを考えてみたいと思います.製品設計の前の技術開発段階では既存の制御因子の水準を最適化してもロバスト性と性能を両立できる解を見出すことができないケースがほとんどです.よって,新たな技術手段を発想することが必須となります.この発想の的確性を高めることができる技術情報をいかに獲得するかが重要な視点となります.
品質工学における技術手段の発想方法について簡単に説明します.従来の品質工学の代表技法であるロバストパラメータ設計ではロバスト性と性能の要因効果図からトレードオフ関係などの技術課題を抽出し,課題を解消する新たな技術手段を考案するというプロセスを基本としていました.また,CS-T法を活用したプロセスでは,物性値や分析データなどの中間特性を活用し,最少サンプル数でとロバスト性と性能の改善メカニズムを把握し,新たな技術手段の発想の的確性を向上させます.両者ともPDSA(Plan Do Study Action)のプロセスを基本としています.
品質工学による技術開発(その17)技術開発のPDSAサイクル - ものづくりドットコム (monodukuri.com)
ベイズ最適化などの機械学習系のツールを技術開発の活動全体の中でどのように位置づけることができるのかを考えてみたいと思います.これまで最適化という技術開発活動全体の中の一部の活動の議論が中心でしたが,技術開発プロセスの中に機械学習を位置づけることで品質工学との違いが明らかになってきます.前述したように技術開発段階では既存の制御因子の水準最適化だけではロバスト性と性能の目標を両立確保できるケースはほとんどありません.そこで新たな技術手段を発想するための技術情報が必要となりますが,最適条件というピンポイントの情報は技術手段の発想に役立ちません.目的特性、中間特性、制御因子の3つパートの因果関係をトータルに把握する必要があるのですが,現状の機械学習のツールでは網羅性のある要因解析が難しいのが現状です.数十もの実験を実施しても目標達成できなないケースはあり得るのですが.その時に最適条件という技術情報しか得られなかったとしたら、効果的にPDSAを回すことは困難です.”その1”で述べた区切りのない実験のリスクに加えて,技術手段を発想するための技術情報の獲得が機械学習の課題と言えます.
機械学習と品質工学を融合して両者の相乗効果を得るアプローチが求められます.交互作用の影響が避けられない,あるいは膨大な数の制御因子があり,直交表実験が困難な場合などです.このような場合は直交表実験の一部実施と機械学習を融合して最短実験回数で最適条件を求めて,その後にCS-T法で改善効果のメカニズムを把握する方法も有効です.
【参考文献】
石川泰佑,細川哲夫,松下誠,今岡龍一:「CS-T法の活用による構造体開発最適化方法の提案」,第25回品質工学研究発表大会論文集, RQES2017, (2017),P.238-241
品質工学における技術手段の発想方法について簡単に説明します.従来の品質工学の代表技法であるロバストパラメータ設計ではロバスト性と性能の要因効果図からトレードオフ関係などの技術課題を抽出し,課題を解消する新たな技術手段を考案するというプロセスを基本としていました.また,CS-T法を活用したプロセスでは,物性値や分析データなどの中間特性を活用し,最少サンプル数でとロバスト性と性能の改善メカニズムを把握し,新たな技術手段の発想の的確性を向上させます.両者ともPDSA(Plan Do Study Action)のプロセスを基本としています.
品質工学による技術開発(その17)技術開発のPDSAサイクル - ものづくりドットコム (monodukuri.com)
ベイズ最適化などの機械学習系のツールを技術開発の活動全体の中でどのように位置づけることができるのかを考えてみたいと思います.これまで最適化という技術開発活動全体の中の一部の活動の議論が中心でしたが,技術開発プロセスの中に機械学習を位置づけることで品質工学との違いが明らかになってきます.前述したように技術開発段階では既存の制御因子の水準最適化だけではロバスト性と性能の目標を両立確保できるケースはほとんどありません.そこで新たな技術手段を発想するための技術情報が必要となりますが,最適条件というピンポイントの情報は技術手段の発想に役立ちません.目的特性、中間特性、制御因子の3つパートの因果関係をトータルに把握する必要があるのですが,現状の機械学習のツールでは網羅性のある要因解析が難しいのが現状です.数十もの実験を実施しても目標達成できなないケースはあり得るのですが.その時に最適条件という技術情報しか得られなかったとしたら、効果的にPDSAを回すことは困難です.”その1”で述べた区切りのない実験のリスクに加えて,技術手段を発想するための技術情報の獲得が機械学習の課題と言えます.
機械学習と品質工学を融合して両者の相乗効果を得るアプローチが求められます.交互作用の影響が避けられない,あるいは膨大な数の制御因子があり,直交表実験が困難な場合などです.このような場合は直交表実験の一部実施と機械学習を融合して最短実験回数で最適条件を求めて,その後にCS-T法で改善効果のメカニズムを把握する方法も有効です.
【参考文献】
石川泰佑,細川哲夫,松下誠,今岡龍一:「CS-T法の活用による構造体開発最適化方法の提案」,第25回品質工学研究発表大会論文集, RQES2017, (2017),P.238-241
2023年9月12日 19時07分51秒 (Tue)
ロバストパラメータ設計と機械学習 その1 交互作用への対応
これまでこのHPでは技術開発や製品設計に関して様々な視点のコメントを投稿してきました.今回は最適化という視点で機械学習と品質工学の違いを考えてみたいと思います.最初に最適化を定義してみます.最適化とは目的特性の値が最も狙いに近くなるように制御因子の水準を設定することであるとします.ここで考慮すべきことは最適化の対象となるシステムを最適化することで,目的特性の値が目標値を達成できる目途がついているかどうかという点です.最近はベイズ最適化などの機械学習系の最適化ツールが注目されていますが,対象とした設計空間の中に目的特性の目標値を達成できる解が存在するかどうかを判断することが重要になってきます.この判断の基準が曖昧である,あるいは楽観的に行き過ぎると,解のない中での無駄な試行錯誤が続いてしまう危険性が高まります.機械学習系の最適化の課題は意思決定につながらない無駄な実験を最少化することにあると考えられます.
一方で品質工学のロバストパラメータ設計について考えてみます.ロバストパラメータ設計は形式的には最適化のアプローチですが,ロバストパラメータ設計の狙いは目的特性の目標値の達成可否を判断することです.より詳細には性能とロバスト性の両立性を評価すること,つまり対象システムのトータル評価が目的です.その意思決定までの実験計画は事前に決まっているので解のない中での先の見えない試行錯誤のリスクは原則的にはありません.
ここで考慮すべき重要な視点が交互作用の影響の大きさです.ロバストパラメータ設計によってシステムを評価するためには,交互作用の影響が十分に小さいという前提があります.そのためにロバストパラメータ設計では確認実験の結果から定義した目的特性の加法性を評価します.加法性が不十分な目的特性は交互作用の影響を受けやすく,要因効果図の傾向の信頼性が低下してしまい,性能とロバスト性の両立性の評価が困難となってしまうからです.システム評価ではなく,最適化が目的であったとしても,交互作用の影響が大きい中で最適条件を見出すためには,組み合わせ効果を検出するための膨大な実験回数が必要となってしまいます.品質工学ではロバストパラメータ設計の実施によって目的特性の加法性が不十分と判断した場合は目的特性を見直すという意思決定をします.良品率など技術的な意味を持たない目的特性は加法性がなく,交互作用の影響が増大してしまうのです.品質工学では加法性のない目的特性ではシステムの評価ができないという考え方を基本としています.また最適化が目的であっても膨大な実験回数が必要になるので,加法性の良い目的特性を再定義することが結果的には得策であると考えます.品質工学は急がば回れのアプローチなのです.
一方,機械学習系では加法性のない目的特性であっても,全組み合わせ実験よりも少ない実験回数で最適条件を見出せる可能性が高まります.パラメータ設計や直交表実験に対する機械学習系のツールのメリットの一つが最適化を目的としたときの交互作用への対応力と言えます.しかし,このことは同時に定義した目的特性の加法性を評価できないというデメリットでもあります.
一方で品質工学のロバストパラメータ設計について考えてみます.ロバストパラメータ設計は形式的には最適化のアプローチですが,ロバストパラメータ設計の狙いは目的特性の目標値の達成可否を判断することです.より詳細には性能とロバスト性の両立性を評価すること,つまり対象システムのトータル評価が目的です.その意思決定までの実験計画は事前に決まっているので解のない中での先の見えない試行錯誤のリスクは原則的にはありません.
ここで考慮すべき重要な視点が交互作用の影響の大きさです.ロバストパラメータ設計によってシステムを評価するためには,交互作用の影響が十分に小さいという前提があります.そのためにロバストパラメータ設計では確認実験の結果から定義した目的特性の加法性を評価します.加法性が不十分な目的特性は交互作用の影響を受けやすく,要因効果図の傾向の信頼性が低下してしまい,性能とロバスト性の両立性の評価が困難となってしまうからです.システム評価ではなく,最適化が目的であったとしても,交互作用の影響が大きい中で最適条件を見出すためには,組み合わせ効果を検出するための膨大な実験回数が必要となってしまいます.品質工学ではロバストパラメータ設計の実施によって目的特性の加法性が不十分と判断した場合は目的特性を見直すという意思決定をします.良品率など技術的な意味を持たない目的特性は加法性がなく,交互作用の影響が増大してしまうのです.品質工学では加法性のない目的特性ではシステムの評価ができないという考え方を基本としています.また最適化が目的であっても膨大な実験回数が必要になるので,加法性の良い目的特性を再定義することが結果的には得策であると考えます.品質工学は急がば回れのアプローチなのです.
一方,機械学習系では加法性のない目的特性であっても,全組み合わせ実験よりも少ない実験回数で最適条件を見出せる可能性が高まります.パラメータ設計や直交表実験に対する機械学習系のツールのメリットの一つが最適化を目的としたときの交互作用への対応力と言えます.しかし,このことは同時に定義した目的特性の加法性を評価できないというデメリットでもあります.
2023年9月11日 15時11分36秒 (Mon)
成功事例ではなく成功体験
成功事例ではなく成功体験
最初に手法と技法の違いについて簡単に説明します.手順通りに実施することで正しい結果が得られるツールを手法と呼ぶことにしています.統計的品質管理の多くのツールは手法と言えます.例えば原因x
と結果y
の間に明確な因果関係がある場合に単回帰分析を実施して予測モデルを構築しますが,そのモデル式は元のデータが同じであれば誰が解析を実施しても同じ結果が得られます.つまり正しい答えが存在します.多変量解析も同様に学習データが同じであれば結果に差がでません.ベイズ最適化も既存の制御因子の最適化が目的なので,最初に取り上げた制御因子と水準が共通であれば結果に大きな差が出ません.このように,手順で結果が決まる手法はツール化も可能です.単回帰分や重回帰分析はエクセルの分析ツールで簡単に解析結果を得ることができます.
品質工学による技術開発(その5)手法から技法そして仕組みへ - ものづくりドットコム (monodukuri.com)
一方,技法とは結果を得るために発想や工夫が必要なアプローチです.枠組みは与えられていますが,評価計画や実験計画の立案には発想や工夫が必要になります.その代表が品櫃工学の機能性評価,ロバストパラメータ設計,CS-T法などです.これらの技法は機能の定義,現象説明因子の発想,さらには新規の制御因子やシステム構造の考案が求められます.このように創造性が要求される技法はツール化することができません.また,正しい結果も存在しません.役立つ結果を得ることが狙いなのです.役立つ結果とは意思決定や次のアクションにつながる技術情報のことです.
かつて,良い手段は自然に広まるという考え方を前提にして,成功事例が活用拡大の原動力になるという意見が多くありました.しかしながら成功事例が活用の拡大にはつながらないということは過去の事例から明らかになっています.その理由はいくつかありますが,真似をしても成果につながらないということが挙げられます.では活用を拡大するにはどうしたらよいかですが,成功体験を持つ技術者を増やすことに尽きると思います.多くの技術者に成功体験を感じてもらうことを目的とした推進戦略が求められています.その原動力がOJTです.技法のスキルはOJTを通じた実践を通じて得るものであることは自分自身でも体験しています.
最初に手法と技法の違いについて簡単に説明します.手順通りに実施することで正しい結果が得られるツールを手法と呼ぶことにしています.統計的品質管理の多くのツールは手法と言えます.例えば原因
品質工学による技術開発(その5)手法から技法そして仕組みへ - ものづくりドットコム (monodukuri.com)
一方,技法とは結果を得るために発想や工夫が必要なアプローチです.枠組みは与えられていますが,評価計画や実験計画の立案には発想や工夫が必要になります.その代表が品櫃工学の機能性評価,ロバストパラメータ設計,CS-T法などです.これらの技法は機能の定義,現象説明因子の発想,さらには新規の制御因子やシステム構造の考案が求められます.このように創造性が要求される技法はツール化することができません.また,正しい結果も存在しません.役立つ結果を得ることが狙いなのです.役立つ結果とは意思決定や次のアクションにつながる技術情報のことです.
かつて,良い手段は自然に広まるという考え方を前提にして,成功事例が活用拡大の原動力になるという意見が多くありました.しかしながら成功事例が活用の拡大にはつながらないということは過去の事例から明らかになっています.その理由はいくつかありますが,真似をしても成果につながらないということが挙げられます.では活用を拡大するにはどうしたらよいかですが,成功体験を持つ技術者を増やすことに尽きると思います.多くの技術者に成功体験を感じてもらうことを目的とした推進戦略が求められています.その原動力がOJTです.技法のスキルはOJTを通じた実践を通じて得るものであることは自分自身でも体験しています.
2023年8月10日 15時40分48秒 (Thu)
最適化が目的ではない
タグチメソッドの代表的な手法がパラメータ設計であることもあって、タグチメソッドの目的は最適化であると誤解されているケースもあります.最適化が目的であれば最近はベイズ最適化など直交表ベースの実験よりも効率的なツールが登場していますのでパラメータ設計の出番は減っていくでしょう.
タグチメソッドを含む品質工学が目指すところを企業からの期待視点で再度共有したいと思います.それは一言で言えばフロントローディングです.具体的にはものづくりプロセスの上流段階で性能とロバストネスを両立確保する技術を蓄積することです.しかも、その技術蓄積は様々な製品設計に汎用的に使えるものである必要があります.さらに、その技術はお客様の期待を超えるものでなければ事業を成長させることができない時代となりました.
このように狙いを定めたときに最適条件の情報がどこまで役立つかを考えることが重要です.そもそも既存の制御因子の水準を最適化するだけで性能とロバストネスを両立確保できるテーマはほとんどありません.よって、新たなシステムや制御因子を発想することが必須であり、それこそが技術開発の目的と言えます.発想のための創造技法が求めらているのです.そのための新しい品質工学技法がCS-T法であり、さらにCS-T法を含む仕組みが"T7“です.今の日本製造業は欧米企業に比べて創造活動に弱点があると言われています.新しい品質工学やT7の有効性が高まっていると感じています.
タグチメソッドを含む品質工学が目指すところを企業からの期待視点で再度共有したいと思います.それは一言で言えばフロントローディングです.具体的にはものづくりプロセスの上流段階で性能とロバストネスを両立確保する技術を蓄積することです.しかも、その技術蓄積は様々な製品設計に汎用的に使えるものである必要があります.さらに、その技術はお客様の期待を超えるものでなければ事業を成長させることができない時代となりました.
このように狙いを定めたときに最適条件の情報がどこまで役立つかを考えることが重要です.そもそも既存の制御因子の水準を最適化するだけで性能とロバストネスを両立確保できるテーマはほとんどありません.よって、新たなシステムや制御因子を発想することが必須であり、それこそが技術開発の目的と言えます.発想のための創造技法が求めらているのです.そのための新しい品質工学技法がCS-T法であり、さらにCS-T法を含む仕組みが"T7“です.今の日本製造業は欧米企業に比べて創造活動に弱点があると言われています.新しい品質工学やT7の有効性が高まっていると感じています.
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