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2023年6月12日 14時14分22秒 (Mon)
KPIと管理項目
KPI(Key Performance Indicator)と管理項目はどちらも経営課題のような最終的な目標を達成する過程での中間的なプロセス指標という意味では共通ですが、その狙いが大きく異なっていると感じています.KPIは評価をすることに主眼が置かれている一方で、品質管理分野での本来の管理項目は良い行動を促すことに主眼が置かれていると思います.
例えば設計段階での手戻り件数を大幅に削減するという部門目標が設定された場合、それを達成するために様々な施策を実施する必要があります.その中の一つにDR(Design Review)での品質確保というテーマが設定されたとします.DRの良し悪しとどういう物差しで測るかを考えることになりますが、ここで評価の視点と良い行動を促す視点では指標が大きく異なり、結果として設計段階での手戻り件数の達成レベルにも大きな影響を与えることになります.
多くの企業では半年単位の目標管理の仕組みが導入されていることもあり、短期で計測可能な指標であるKPIが設定されています.DRのKPIとしては、例えば指摘件数などが一般的でしょう.あるいは、設計段階での品質作りこみであれば、パラメータ設計の実施件数などもKPIとして使われるケースが多いと思います.ここで、よく考えなければいけないことは、DRの指摘件数は多ければ多いほど良い望大特性なのか?ということです.見当はずれな指摘に対応したとするとそれは無題な時間を費やしてしまったことになります.パラメータ設計も同様で、過去の知見のある制御因子を取り上げて最適化してもさらなる改善は期待できません.時間の無駄になってしまいます.
では良い行動を促す管理項目な何かですが、例えばDR指摘漏れ数などです.指摘すべきことが漏れなく指摘する意識を持つことでDRの質が向上し、設計段階での手戻り低減が期待できます.ところが、指摘漏れ数はリアルタイムでの計測は困難です.設計完了後の市場投入段階で、指摘が漏れていたとわかるのが普通です.つまり、実施と結果にタイムラグがあるのです.このタイムラグが目標管理制度と管理項目の相性を悪くさせています.
上流で性能とロバスト性を両立確保するロバストパラメータ設計も同様に実施と効果検証にタイムラグがあります.ロバストパラメータ設計の回数は制御因子の数などのKPIはリアルタイム計測が可能なので目標管理制度と相性が良いですが、事業化成功などの最終目標の達成可能性が高まる指標とは言えません.例えば、製品設計段階で必要となるであろうロバスト性と性能の両立範囲などを管理項目することで最終ゴールに向けて質の高い活動が可能となりますが、その両立範囲を設定し、定量的な指標にすることは簡単ではありません.工夫も必要なるでしょう.
このようにKPIと管理項目は似ていますが本質的な違いがあります.
例えば設計段階での手戻り件数を大幅に削減するという部門目標が設定された場合、それを達成するために様々な施策を実施する必要があります.その中の一つにDR(Design Review)での品質確保というテーマが設定されたとします.DRの良し悪しとどういう物差しで測るかを考えることになりますが、ここで評価の視点と良い行動を促す視点では指標が大きく異なり、結果として設計段階での手戻り件数の達成レベルにも大きな影響を与えることになります.
多くの企業では半年単位の目標管理の仕組みが導入されていることもあり、短期で計測可能な指標であるKPIが設定されています.DRのKPIとしては、例えば指摘件数などが一般的でしょう.あるいは、設計段階での品質作りこみであれば、パラメータ設計の実施件数などもKPIとして使われるケースが多いと思います.ここで、よく考えなければいけないことは、DRの指摘件数は多ければ多いほど良い望大特性なのか?ということです.見当はずれな指摘に対応したとするとそれは無題な時間を費やしてしまったことになります.パラメータ設計も同様で、過去の知見のある制御因子を取り上げて最適化してもさらなる改善は期待できません.時間の無駄になってしまいます.
では良い行動を促す管理項目な何かですが、例えばDR指摘漏れ数などです.指摘すべきことが漏れなく指摘する意識を持つことでDRの質が向上し、設計段階での手戻り低減が期待できます.ところが、指摘漏れ数はリアルタイムでの計測は困難です.設計完了後の市場投入段階で、指摘が漏れていたとわかるのが普通です.つまり、実施と結果にタイムラグがあるのです.このタイムラグが目標管理制度と管理項目の相性を悪くさせています.
上流で性能とロバスト性を両立確保するロバストパラメータ設計も同様に実施と効果検証にタイムラグがあります.ロバストパラメータ設計の回数は制御因子の数などのKPIはリアルタイム計測が可能なので目標管理制度と相性が良いですが、事業化成功などの最終目標の達成可能性が高まる指標とは言えません.例えば、製品設計段階で必要となるであろうロバスト性と性能の両立範囲などを管理項目することで最終ゴールに向けて質の高い活動が可能となりますが、その両立範囲を設定し、定量的な指標にすることは簡単ではありません.工夫も必要なるでしょう.
このようにKPIと管理項目は似ていますが本質的な違いがあります.
2023年1月23日 9時43分14秒 (Mon)
特別企画シンポジウム成功裏に終了
1月20日に特別企画シンポジウムを開催し成功裏に終了することができました.参加者は119名となり当初の予定を大幅に上回り、多くの方々に技法融合に関する最新情報と気づきを与えることができたと思っております.今回のイベントはTRIZ協会と品質工学会の両団体による共同開催という方向で昨年4月から企画立案をスタートし,大きな方向性から詳細プログラム、当日の運営まで約十カ月にわたる関係者の協力をいただくことによって実現したものです.皆様のご協力がなしには本イベントを成功に導くことはできませんでした.改めて本イベントに協力いただいた両団体の皆様に感謝申し上げます.
品質工学会 企業交流会 (rqes.or.jp)
本イベントを企画,参加しての感想を記します.本イベントの狙いは,品質工学分野だけではなく,他分野の様々な技法にもフォーカスし,それら各技法を大きな方向性の下で融合させることによって,より大きな成果を実現できることを示すことでした.TRIZ協会と品質工学会からのプレゼンやパネルディスカッションがその方向で違和感なく融合できるどうかが今回のイベントの成功,不成功を分けるポイントでした.結果的には両団体からのプレゼンやパネルディスカッションは分野の違いをまったく意識させない自然な流れの中で進み,参加者には新しい方向性に関する最新情報と新たな気づきを与えることができたと思っております.
この自然な流れが実現した要因についても述べてみたいと思います.技法融合で実現する基軸はVOC,創造,評価の3つであり,各々にQFD,TRIZ,品質工学が対応しています.これら3つの基軸が互いに交わることなく独立したものであったとすると今回のイベントの違和感のない自然な流れは実現できなかったでしょう.実はこれら3つの分野には互いに親和する共通の要素が存在すると思うのです.従来の品質工学の狙いは広い意味での評価でした.この評価には機能性評価によるロバスト性の予測だけではなく,ロバストパラメータ設計によるシステムのトータル評価も含みます.この評価とVOCを結ぶ懸け橋が損失関数と目的機能であろうと思うのです.両者とも技術起点ではなく顧客起点を重視しています.
次に評価と発想について考えてみます.これまでの品質工学のメインの技法であるロバストパラメータ設計の狙いはシステムの効率的な最適化を通じて,ロバスト性と性能の両立性を評価することでした.考案あるいは選択したシステムの限界を短期間に把握し,目標とのギャップを認識した上で,そのギャップを埋める創造活動に移行すること.つまり最適化と評価のための無駄な試行錯誤を排除し,作り上げた時間をシステム考案などの創造活動に充てることが狙いであったのです.ただし,従来のロバストパラメータ設計では創造活動のために有効な技術情報の提供ができないという限界がありました.その限界を突破し,実験を通じて創造のために有効な技術情報を効率的に得る技法がCS-T法です.評価を基軸とする品質工学と創造を基軸とするTRIZの懸け橋がCS-T法であると言えます.
最後にVOCと創造ですが,この懸け橋がTRIZの9画面法です.9画面法によって将来の市場やお客様のニーズを予測することができます.その予測した市場から実現すべき技術手段が見えてきます.5年から10年先に向けての技術開発戦略を策定するために有効な技法が9画面法です.
このようにVOC,創造,評価の3つ基軸の間の懸け橋となる技法が品質工学とTRIZの中に存在しているのです.これら懸け橋となる技法が今回のイベントの各発表の中で取り上げられたこと.それがイベント全体の自然な流れを生み出したのだと感じています.
品質工学会 企業交流会 (rqes.or.jp)
本イベントを企画,参加しての感想を記します.本イベントの狙いは,品質工学分野だけではなく,他分野の様々な技法にもフォーカスし,それら各技法を大きな方向性の下で融合させることによって,より大きな成果を実現できることを示すことでした.TRIZ協会と品質工学会からのプレゼンやパネルディスカッションがその方向で違和感なく融合できるどうかが今回のイベントの成功,不成功を分けるポイントでした.結果的には両団体からのプレゼンやパネルディスカッションは分野の違いをまったく意識させない自然な流れの中で進み,参加者には新しい方向性に関する最新情報と新たな気づきを与えることができたと思っております.
この自然な流れが実現した要因についても述べてみたいと思います.技法融合で実現する基軸はVOC,創造,評価の3つであり,各々にQFD,TRIZ,品質工学が対応しています.これら3つの基軸が互いに交わることなく独立したものであったとすると今回のイベントの違和感のない自然な流れは実現できなかったでしょう.実はこれら3つの分野には互いに親和する共通の要素が存在すると思うのです.従来の品質工学の狙いは広い意味での評価でした.この評価には機能性評価によるロバスト性の予測だけではなく,ロバストパラメータ設計によるシステムのトータル評価も含みます.この評価とVOCを結ぶ懸け橋が損失関数と目的機能であろうと思うのです.両者とも技術起点ではなく顧客起点を重視しています.
次に評価と発想について考えてみます.これまでの品質工学のメインの技法であるロバストパラメータ設計の狙いはシステムの効率的な最適化を通じて,ロバスト性と性能の両立性を評価することでした.考案あるいは選択したシステムの限界を短期間に把握し,目標とのギャップを認識した上で,そのギャップを埋める創造活動に移行すること.つまり最適化と評価のための無駄な試行錯誤を排除し,作り上げた時間をシステム考案などの創造活動に充てることが狙いであったのです.ただし,従来のロバストパラメータ設計では創造活動のために有効な技術情報の提供ができないという限界がありました.その限界を突破し,実験を通じて創造のために有効な技術情報を効率的に得る技法がCS-T法です.評価を基軸とする品質工学と創造を基軸とするTRIZの懸け橋がCS-T法であると言えます.
最後にVOCと創造ですが,この懸け橋がTRIZの9画面法です.9画面法によって将来の市場やお客様のニーズを予測することができます.その予測した市場から実現すべき技術手段が見えてきます.5年から10年先に向けての技術開発戦略を策定するために有効な技法が9画面法です.
このようにVOC,創造,評価の3つ基軸の間の懸け橋となる技法が品質工学とTRIZの中に存在しているのです.これら懸け橋となる技法が今回のイベントの各発表の中で取り上げられたこと.それがイベント全体の自然な流れを生み出したのだと感じています.
2023年1月4日 15時33分28秒 (Wed)
2023年 年初所感
皆様、明けましておめでとうございます.
昨年も多くの方々に本HPに来訪してくださいました.この場を借りて感謝申し上げます.
今年も引き続きよろしくお願いいたします.
今回はこれまでの学会活動を振り返り,今後への想いを述べさせていただきます.
品質工学会の理事を拝命してから4年という月日が流れました.その間に日本品質管理学会と品質工学会の共同研究会「商品開発プロセス研究会」の幹事として活動を継続し,WG2の研究テーマである「創造性と効率性を両立した技術開発プロセスの構築」の成果として,
「技術開発プロセスを設計するプラットフォーム”T7”」
を提案することができました.
T7については本HPでも概要を紹介しております.さらに詳細については下記を参照いただければと思います.
「技術開発プロセスを設計するプラットフォームT7の提案と検証」品質工学, Vol.30, No.2
また,本HPの”新連載 品質工学による技術開発 無料動画付き”でも関連情報を継続発信しておりますので,参考にしていただければと思います.
T7は技術開発を効果的に実行するための仕組みと言えます.これまで品質工学会や日本品質管理学会における研究報告のほとんどが個別の手法や技法の深掘り,あるいは進化を目的としたものでした.個々の手法や技法の精度や効率性を高めることは重要ですが,それだけで日本製造業が抱える大きな課題を達成できるのかという疑問があります.欧米での品質に関わる研究動向に目を転じると,個別の手法や技法ではなくQFD,TRIZ,タグチメソッドなどの各技法を融合した仕組み論を展開していることに気がつきます.このような海外の状況を踏まえると,今の日本製造業は欧米の良いところを学び,それを日本流にアレンジして自分達のものに仕上げていく活動が必要であり,それなくして日本製造業が再び世界のフロントランナーとして復活することは極めて困難であると言わざるを得ないと思うのです.
米国で市民権を得ている技術開発の仕組みであるDFSS(Design for Six Sigma)をベンチマークし,それを超えることを目指して構築した仕組みがT7です.今年はT7を多くの企業様に知っていただき,活用検討の最初の年に位置付けたいという想いを持っていますが,その方法については過去の反省が必要と考えています.2000年代に多くの日本製造業がトップダウンで品質工学を導入しましたが,現在でも有効活用が続いている組織あるいは企業はわずかしかないという現実があります.その主要因は手段の目的化にあったのではないでしょうか.何のためにの目的が曖昧なまま全員パラメータ設計を使えというようなやり方では成果は期待できません.なぜならば機能性評価,パラメータ設計,CS-T法は教科書通りに実施すれば成果が出るものではなく,課題に応じたアレンジや工夫が必要な技法だからです.そこが統計的品質管理などの手法との大きな違いです.
手法には正しい答えが存在します.正しい手順で実施すれば誰でも共通の正しい結果を得ることができます.よって,手法は集合教育で正しい手順を学んで全員が業務適用することで成果を期待できます.技法には正しい答えは存在せず,役立つ結果を得ることが目的です.役立つ結果を得るためには,実践経験を通じたスキルアップが必要です.つまり技法のスキルアップはOJTを通じて実現するしかないのです.急がば回れのアプローチになりますが,技法を活用できる組織力を実現しなければ技法活用による継続的な成果は難しいのです.
中長期視点での人財育成が組織力を作り,それが継続的な成果の原動力となるのですが,そのような大きな取り組みはボトムアップの草の根活動では限界があります.やはりトップダウンが必須ではあります.しかし,ここは繰り返しにはなりますが,トップダウンはやり方を間違えるとマイナス効果を生んでしまいます.トップダウンを成功させるためには中長期視点での組織力向上がなぜ必要なのかを説明する上位の目的が必要です.その目的は経営課題であるべきと考えます.大きな経営課題達成の手段として組織力向上があり,組織力向上の手段にT7を位置付けることが日本製造業復活の鍵になると考えています.これはかつて日本製造業が生み出したTQMの中のマネジメントの仕組みである方針管理を技術開発プロセスに導入することにほかなりません.そのような狙いの下で,現在WG2では方針管理による技術開発プロセスのマネジメントについて研究を継続しています.この研究活動には品質管理の実践分野の世界的第一人者である福原先生にもアドバイザーとして参加していただいております.T7や方針管理による技術開発プロセスのマネジメントについては,何らかの形で今年中に報告したいと考えております.
ご期待ください
昨年も多くの方々に本HPに来訪してくださいました.この場を借りて感謝申し上げます.
今年も引き続きよろしくお願いいたします.
今回はこれまでの学会活動を振り返り,今後への想いを述べさせていただきます.
品質工学会の理事を拝命してから4年という月日が流れました.その間に日本品質管理学会と品質工学会の共同研究会「商品開発プロセス研究会」の幹事として活動を継続し,WG2の研究テーマである「創造性と効率性を両立した技術開発プロセスの構築」の成果として,
「技術開発プロセスを設計するプラットフォーム”T7”」
を提案することができました.
T7については本HPでも概要を紹介しております.さらに詳細については下記を参照いただければと思います.
「技術開発プロセスを設計するプラットフォームT7の提案と検証」品質工学, Vol.30, No.2
また,本HPの”新連載 品質工学による技術開発 無料動画付き”でも関連情報を継続発信しておりますので,参考にしていただければと思います.
T7は技術開発を効果的に実行するための仕組みと言えます.これまで品質工学会や日本品質管理学会における研究報告のほとんどが個別の手法や技法の深掘り,あるいは進化を目的としたものでした.個々の手法や技法の精度や効率性を高めることは重要ですが,それだけで日本製造業が抱える大きな課題を達成できるのかという疑問があります.欧米での品質に関わる研究動向に目を転じると,個別の手法や技法ではなくQFD,TRIZ,タグチメソッドなどの各技法を融合した仕組み論を展開していることに気がつきます.このような海外の状況を踏まえると,今の日本製造業は欧米の良いところを学び,それを日本流にアレンジして自分達のものに仕上げていく活動が必要であり,それなくして日本製造業が再び世界のフロントランナーとして復活することは極めて困難であると言わざるを得ないと思うのです.
米国で市民権を得ている技術開発の仕組みであるDFSS(Design for Six Sigma)をベンチマークし,それを超えることを目指して構築した仕組みがT7です.今年はT7を多くの企業様に知っていただき,活用検討の最初の年に位置付けたいという想いを持っていますが,その方法については過去の反省が必要と考えています.2000年代に多くの日本製造業がトップダウンで品質工学を導入しましたが,現在でも有効活用が続いている組織あるいは企業はわずかしかないという現実があります.その主要因は手段の目的化にあったのではないでしょうか.何のためにの目的が曖昧なまま全員パラメータ設計を使えというようなやり方では成果は期待できません.なぜならば機能性評価,パラメータ設計,CS-T法は教科書通りに実施すれば成果が出るものではなく,課題に応じたアレンジや工夫が必要な技法だからです.そこが統計的品質管理などの手法との大きな違いです.
手法には正しい答えが存在します.正しい手順で実施すれば誰でも共通の正しい結果を得ることができます.よって,手法は集合教育で正しい手順を学んで全員が業務適用することで成果を期待できます.技法には正しい答えは存在せず,役立つ結果を得ることが目的です.役立つ結果を得るためには,実践経験を通じたスキルアップが必要です.つまり技法のスキルアップはOJTを通じて実現するしかないのです.急がば回れのアプローチになりますが,技法を活用できる組織力を実現しなければ技法活用による継続的な成果は難しいのです.
中長期視点での人財育成が組織力を作り,それが継続的な成果の原動力となるのですが,そのような大きな取り組みはボトムアップの草の根活動では限界があります.やはりトップダウンが必須ではあります.しかし,ここは繰り返しにはなりますが,トップダウンはやり方を間違えるとマイナス効果を生んでしまいます.トップダウンを成功させるためには中長期視点での組織力向上がなぜ必要なのかを説明する上位の目的が必要です.その目的は経営課題であるべきと考えます.大きな経営課題達成の手段として組織力向上があり,組織力向上の手段にT7を位置付けることが日本製造業復活の鍵になると考えています.これはかつて日本製造業が生み出したTQMの中のマネジメントの仕組みである方針管理を技術開発プロセスに導入することにほかなりません.そのような狙いの下で,現在WG2では方針管理による技術開発プロセスのマネジメントについて研究を継続しています.この研究活動には品質管理の実践分野の世界的第一人者である福原先生にもアドバイザーとして参加していただいております.T7や方針管理による技術開発プロセスのマネジメントについては,何らかの形で今年中に報告したいと考えております.
ご期待ください
2022年11月21日 14時14分31秒 (Mon)
組織力が魅力品質を生み出す ”第15回品質工学技術戦略研究発表大会に参加して”
今回の大会は2つの招待講演、3つの研究発表と最後にパネルディスカッションという構成でした.どの発表も技法活用の個別事例というレベルではなく,経営課題や事業課題を達成するために,全体プロセスや仕組みの中でいかに技法を活用したかという視点が中心となっており,大変興味深く聴講することができました.その中でも個人的に最も大きな気づきがあったのがマツダの安達様のご発表です.以下に感想を述べさせていただきます.
テーマ お客様の輝きにつなげるマツダのモノづくり
~魂動デザイン実現に向けたプレス金型製作プロセス革新~
生産技術の領域はお客様の声であるVOCから最も距離が離れた分野であると思われる方が多いと思います.設計から受けた図面に書かれた寸法などの要求特性をいかに早く,正確に実現するか,それが生産技術の役割という考え方です.ところが実はそうではないということを改めて感じさせてくれたのが今回のマツダの発表です.デザイナーとそれを実現する生産技術はトレードオフ関係にあります.例えば,現状の工法ではデザイナーが発想した形を実現することが困難であり,新たな設備導入が必要となるようなケースです.そのような場合,デザイナーが発想した形を実現するための設備投資は本当に販売台数の増加につながるのか,というような議論になることが多いのではないでしょうか.このようなトレードオフを前提とした議論が部門間の摩擦へとつながってしまうのかもしれません.
ここ数年でマツダ車の魅力度が向上していると感じている方々が多いと思います.その成功要因は様々あると思いますが,中でも大きなものの一つが組織力であることを今回の安達様のご発表から感じ取ることができました.マツダでは,ややもすると妥協点を見出す関係になってしまうデザイナーと技術者が融合して,共通の価値を目指して創造活動を実現しているのです.このベクトルを合わせる原動力が“魂動デザイン”というコンセプトです.魂動デザインについて様々な側面から説明がありましたが,それは潜在ニーズのVOCであり,狩野モデルにおける魅力品質を実現するということであると理解することができました.
【品質工学】品質工学による技術開発1-1~手法から技法 仕組みへ~:Technology Development with Robust Quality Engineering1-1 - YouTube
この動画の中で,魅力品質を実現するためには,その前提として当たり前品質であるロバスト性を高いレベルで確保しておく必要があるという説明をしております.マツダの取り組みは,組織力によって魅力品質と当たり前品質のトレードオフを乗り越えて,両者の両立を実現した素晴らしい事例です.
また“魂動デザイン”というコンセプトの下で部門の壁を超えて実現した組織力はQFDが目指している理想を実現しているとも感じました.QFDの狙いは複数ありますが,その中の一つが部門間の協業を促進するコミュニケーションツールという位置づけです.“魂動デザイン”というVOCを意思決定の起点として,デザイン部門と生産技術部門が連携する.これによって,技術者と技能者のモチベーションが高まり,それが10μmレベルの精度が要求される難易度の高い生産技術を実現した原動力であったと思います.
これまでの品質工学は市場で様々な使い方をしても機能を維持するロバスト性を確保することを目指してきました.今後はさらに一歩進んで,魅力品質や一元品質でお客様の期待を超えることを目指す.そういう時代に入ったと実感しました.
テーマ お客様の輝きにつなげるマツダのモノづくり
~魂動デザイン実現に向けたプレス金型製作プロセス革新~
生産技術の領域はお客様の声であるVOCから最も距離が離れた分野であると思われる方が多いと思います.設計から受けた図面に書かれた寸法などの要求特性をいかに早く,正確に実現するか,それが生産技術の役割という考え方です.ところが実はそうではないということを改めて感じさせてくれたのが今回のマツダの発表です.デザイナーとそれを実現する生産技術はトレードオフ関係にあります.例えば,現状の工法ではデザイナーが発想した形を実現することが困難であり,新たな設備導入が必要となるようなケースです.そのような場合,デザイナーが発想した形を実現するための設備投資は本当に販売台数の増加につながるのか,というような議論になることが多いのではないでしょうか.このようなトレードオフを前提とした議論が部門間の摩擦へとつながってしまうのかもしれません.
ここ数年でマツダ車の魅力度が向上していると感じている方々が多いと思います.その成功要因は様々あると思いますが,中でも大きなものの一つが組織力であることを今回の安達様のご発表から感じ取ることができました.マツダでは,ややもすると妥協点を見出す関係になってしまうデザイナーと技術者が融合して,共通の価値を目指して創造活動を実現しているのです.このベクトルを合わせる原動力が“魂動デザイン”というコンセプトです.魂動デザインについて様々な側面から説明がありましたが,それは潜在ニーズのVOCであり,狩野モデルにおける魅力品質を実現するということであると理解することができました.
【品質工学】品質工学による技術開発1-1~手法から技法 仕組みへ~:Technology Development with Robust Quality Engineering1-1 - YouTube
この動画の中で,魅力品質を実現するためには,その前提として当たり前品質であるロバスト性を高いレベルで確保しておく必要があるという説明をしております.マツダの取り組みは,組織力によって魅力品質と当たり前品質のトレードオフを乗り越えて,両者の両立を実現した素晴らしい事例です.
また“魂動デザイン”というコンセプトの下で部門の壁を超えて実現した組織力はQFDが目指している理想を実現しているとも感じました.QFDの狙いは複数ありますが,その中の一つが部門間の協業を促進するコミュニケーションツールという位置づけです.“魂動デザイン”というVOCを意思決定の起点として,デザイン部門と生産技術部門が連携する.これによって,技術者と技能者のモチベーションが高まり,それが10μmレベルの精度が要求される難易度の高い生産技術を実現した原動力であったと思います.
これまでの品質工学は市場で様々な使い方をしても機能を維持するロバスト性を確保することを目指してきました.今後はさらに一歩進んで,魅力品質や一元品質でお客様の期待を超えることを目指す.そういう時代に入ったと実感しました.
2022年9月3日 14時27分37秒 (Sat)
第18回 日本TRIZシンポジウムに参加しました その3
QFD,TRIZ,タグチの融合についても思うところがあったので述べてみたいと思います.この3つの技法の融合効果の可能性についてはずいぶん前に提案されていたことで新しいことではありませんが,その後現在に至るまでこの領域の研究や実践が進んでないのが実態であり,この3技法以外も含めたトータルな技術開発プロセスの構築が大きな課題であると認識しています.その成果の一つが本HPでも紹介している「技術開発プロセスを設計するプラットフォームT7」です.ここでは,T7の応用の方向性の一つとして,この3技法の新たな融合の可能性について述べてみたいと思います.
従来のQFD,TRIZ,タグチの融合は以下のステップをイメージしていました.
Step1 QFDでVOCを選定
Step2 TRIZでVOCを実現する技術手段(システム)を考案
Step3 タグチでシステムのロバスト性を最適化
このプロセスではTRIZの次にタグチ実施となっていますが,その前提にはある程度の技術蓄積があるということがあると思うのです.TRIZ活用の出発点で,問題の本質を見える化するために技術的な矛盾を定義しますが,技術的な矛盾が定義できる状態にあるということは,その技術に関してある程度以上にメカニズムを把握していることが前提となるかと思います.別の言い方をすると,CS-T法における現象説明因子と目的機能の因果関係が把握できているということです.これができるのは既存製品の問題点を解決するケースであり,問題解決では上に示した3つのStepが有効になるのではないかと思うのです.
新規技術の技術開発の初期段階では,目的機能を実現する下位機能(公理設計のFnctional Requiement)が十分に考案されてない,あるいは重要な下位機能が特定されていないケースがほとんどです.この段階での活動の質が技術開発の成功率を決めるのですが,この段階で問題の本質を誤って定義してしまうと技術開発の方向性を誤ってしまうことになります.それを避けるためにも最初にCS-T法を実施し,性能とロバスト性の改善効果のメカニズムを把握し,そこから現象説明因子領域で矛盾を定義する.その後にTRIZを実施することで,新たなシステム考案の的確性が高まると思うのです.ニコン時代のLIMDOW-MOの技術開発やリコーでのVCSELレーザー開発での経験からもこのように思うのです.来年1月に開催される日本TRIZ協会と品質工学会の共催イベントで情報共有したいと思います.
従来のQFD,TRIZ,タグチの融合は以下のステップをイメージしていました.
Step1 QFDでVOCを選定
Step2 TRIZでVOCを実現する技術手段(システム)を考案
Step3 タグチでシステムのロバスト性を最適化
このプロセスではTRIZの次にタグチ実施となっていますが,その前提にはある程度の技術蓄積があるということがあると思うのです.TRIZ活用の出発点で,問題の本質を見える化するために技術的な矛盾を定義しますが,技術的な矛盾が定義できる状態にあるということは,その技術に関してある程度以上にメカニズムを把握していることが前提となるかと思います.別の言い方をすると,CS-T法における現象説明因子と目的機能の因果関係が把握できているということです.これができるのは既存製品の問題点を解決するケースであり,問題解決では上に示した3つのStepが有効になるのではないかと思うのです.
新規技術の技術開発の初期段階では,目的機能を実現する下位機能(公理設計のFnctional Requiement)が十分に考案されてない,あるいは重要な下位機能が特定されていないケースがほとんどです.この段階での活動の質が技術開発の成功率を決めるのですが,この段階で問題の本質を誤って定義してしまうと技術開発の方向性を誤ってしまうことになります.それを避けるためにも最初にCS-T法を実施し,性能とロバスト性の改善効果のメカニズムを把握し,そこから現象説明因子領域で矛盾を定義する.その後にTRIZを実施することで,新たなシステム考案の的確性が高まると思うのです.ニコン時代のLIMDOW-MOの技術開発やリコーでのVCSELレーザー開発での経験からもこのように思うのです.来年1月に開催される日本TRIZ協会と品質工学会の共催イベントで情報共有したいと思います.
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