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2019年7月10日 10時56分56秒 (Wed)

RQES大会発表報告 その2 ”CS-T法による制御因子考案と基本機能探索の同時実施”

RQES2019の2日目の午後の大ホールのセッションは3件ともCS-T法の発表となりました.内訳はリコーから2件,ダイセル様から1件です.ダイセル様の発表は,CS-T法を化学系に応用した内容で,得られた技術情報をQFDの2元表に蓄積するというアプローチです.まだトライアル段階ですが,このような取り組みを継続することで幅広く活用できる技術のデータベースを構築することが可能となるはずです.そういう意味で,とても戦略性があると感じました.

私からの表題の発表の主張は,
”CS-T法の活用によって,新たなシステムや制御委因子の考案の的確性が高まると同時に,基本機能を探索することもできる”
ということです.CS-T法は以下の開発活動の3つのパート全てを実験計画として同時に取り上げます.

1) シンセシスパート
システムを考案・選択する.制御因子の水準を変更をする
2) アナリシスパート
目的特性の値が変化する現象を記述するために現象説明因子Xをたくさん取り上げる
3) マネジメントパート
   VOCの代用となる計測特性と目的機能を定義し,誤差因子を抽出選択することで性能と品質の目標を設定する

この3つのパートの因果関係は1)⇒2)⇒3)となりますが,CS-T法は2)と3)の因果関係を把握することを目的とします.この因果関係を把握することは,すなわち改善メカニズムの理解につながるので,それによって新たなシステムや制御
因子を考案する的確性が高まることを目指すのがCS-T法の第一の狙いです.ここで的確性とは性能と品質の目標を達成する可能性の高さです.

一方,基本機能の計測特性を以下のように定義すれば,CS-T法をベースとした開発活動は基本機能の探求活動であるとも言えるわけです.
基本機能の計測特性y*:アナリシスパートにある現象説明因子Xの中でVOCの代用となる計測特性yと因果関係を持ち,         yを完全に置き換えることが可能なもの
ここで完全に置き換え可能とは,計測特性yと因果関係を持つ制御因子全てと因果関係を持つ現象説明因子であるという意味です.この完全を定義に入れると基本機能が存在するケースが激減してしまうと思います.

この発表では2つの事例で基本機能の探索結果を示しましたが,ここで言いたいことは,基本機能を発想することはとても有効ですが,目的特性との因果関係の完全性を把握する活動なしに,それを開発活動の指標にすることは大きなリスクになるということです.基本機能は開発の方向性を決める指標であり,到達点を測るものさしにもなるわけですから,その定義が誤っていると開発活動はゴールに向かって進まなくなってしまいます.それが基本機能の有効性を確認せずに開発活動に適用するリスクです.そういう意味で基本機能万能主義はまずいと思うのです.


2019年7月8日 18時50分52秒 (Mon)

RQES2019 発表報告 その1 "各種直交表の主効果検出力比較”

今年のRQES2019では2件発表しました.
そのうちの1件目の発表”各種直交表の主効果検出力の比較”について概要を報告します.

この研究発表は2014年に品質管理学会に投稿された東工大の宮川先生らの論文がトリガーとなっています.その論文の内容はカンファレンス行列(以下C行列)という直交表の新たな解析方法に関するものでしたが,私はこのC行列という直交表は2因子間の一次交互作用が交絡しないというすごい特長を持っているということを知って驚いてしまいました.品質工学の骨格に位置付けられる基本機能のコンセプトの狙いは,評価特性の加法性を確保し,交互作用の影響を低減することにありますが,直交表というツールを使えば交互作用を大幅に低減できるとすれば相当に画期的なことです.

我々はC行列に関する研究を2016年頃にスタートし,その後2017年,2018年,2019年と3年連続でRQESで発表しました.で、今年2019年が本研究の区切りとします.2017年はC行列の効果検証,2018年はC行列がら要因効果図を書く方法について発表し,今年は以下の各種直交表の性能を比較評価し,一連の研究活動を終えることしました.
 直交表L16(2因子間交互作用は全て検出)
 直交表L18
 直交表L12
 C行列
 D計画
ここでD計画とは実験回数,制御因子の水準幅,モデル(交互作用を検出するかどうかなど)の条件を与えると最適な実験計画をOUTPUTしてくれるツールです.今回の検証は直交表L12と比較するために12回の実験,主効果のみのモデルを与えました.ちなみに2因子間交互作用を検出するモデルを与えると直交表L16が得られました.

性能は以下のように定義しました.
 5つの制御因子からなる電気回路モデルを取り上げ,243通りの水準設定パターンを作り,243パターン毎に全組み合わせ実験を実施する.この全組み合わせ実験から得られた要因効果図(主効果)の傾向に近ければ近いほど性能が良い直交表であるとする.

結果ですが,当然のことながら交互作用を検出できる割り付けをした直交表L16がダントツに良かったのですが,なんと驚いたことにC行列の性能が直交表L12とほとんど変わらないということがわかったのです.これはおそらく以下の理由によるものと思います.
 ・直交表L12は混合型なので2因子間の交互作用が他の列に均等にばらまかれる
 ・全ての制御因子の2因子組み合わせの交互作用が全ての列にランダムにばらまかれると,交互作用の傾向はランダムなので,互いに打ち消し合い,結果として主効果が浮かび上がってくる.
つまり,混合型直交表の全ての列に制御因子を割り付けることで交互作用の相殺効果を利用することが可能となり,少ない実験回数で,かなり主効果に近い傾向が再現するということではないかと思うのです.3年間の研究で,改めて田口先生の発想のすごさを実感しました.

結論ですが,直交表L18の性能がやや劣りますが,どの直交表も(L16以外は)全組み合わせ実験の結果からは相当に離れているという意味では大差ないとも言えます.やはり,交互作用の影響を抑制するもっとも効果的な方法は加法性に優れた特性値を考案・選択することかと思います.これが品質工学の基本戦略ですね.


2019年7月7日 20時44分13秒 (Sun)

AIと品質工学

製造業がグローバル競争で生き残るためには独自技術に基づく差別化された製品を効率的かつ継続的に市場投入することが必須条件となってきました.以前のような国内での横並び競争では生き残れなくなってきたのです.この時代の変化に対応して,我々は技術開発活動を質的に変革しなければならない状況にあることは共通認識かと思います.そして,モノづくりを変革する手段として最も注目されているのがAIです.AIを利用すれば百個以上もある設計パラメータを自動で最適化してくれます.AIはとてもパワフルな効率化ツールであり,AIツールの活用なしにグローバル競争での生き残りは難しいでしょう.しかし我々が認識しなければいけないことは,AIは与えられた設計空間の中での最適化を最短時間で正確に導くことは得意ですが,与えられた設計空間の外側に存在するよりよい解を導き出すことが不得意であるということです.

お客様の期待を超える製品を実現するためには性能や品質を飛躍的に向上させる,あるいは従来にない新たな機能を実現する必要があります.そして,そのためには新たな構造,機構,工法,材料等の考案が必要であり,そこには創造性が要求されます.創造は最適化のように手順やアルゴリズムに従って実現できるものではありません.残念ながらAIは創造を得意としていないのです.むしろAIに頼りすぎることは技術者の創造性を抑圧してしまうかもしれません.AIに100%頼るのではなく,創造性を効率的に引き出す方向にAIを上手く活用することが課題と言えます.その具体的な方法を2018年にマレーシアのクアラルンプールで開催された品質工学の国際大会:4thICRQEで発表しました.タイトルは以下です.
  Surpassing the Current Limits of AI-based Design Methods Using the CS-T Method in Tandem with Automatic Optimization Tools
現在,ジャーナルへの投稿を進めているところです.これが思った以上に長期化しています.掲載がいつになるのか???ですが,掲載されましたら本ブログでも内容を紹介します.


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