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2021年5月7日 17時13分23秒 (Fri)
方針管理と日米企業
前々回は商品開発プロセス研究会の成果である技術開発プロセスを設計するプラットフォーム"T7"を紹介しました.今回は次の研究テーマの一つである「創造性と効率性を両立する技術開発プロセスを実現するマネジメント」について触れてみたいと思います.最初にこの研究テーマを設定した背景について説明します."T7"は効果的なプラットフォームであると期待していますが,どんなに優れたアプローチや技法でも,それを実施すること自体を目的化してしまうと形骸化が進行し,効果が得られないばかりか,効果もなく面倒なだけの技法など二度と使いたくないという方々が大多数となってしまいます.そして,活用者は一部のみという状況になってしまいます.このような状況にならないようにするためには"T7"を手段として位置付けて,より上位の目的を設定するマネジメントの仕組みが必要です.その仕組みとして「方針管理」に注目しました.方針管理の骨格は,権限移譲による自律的活動を通じた人材育成とチームワークによる改革の実現です.
かつて多くの日本企業は方針管理を自社のマネジメントに効果的に取り入れていたのですが,方針管理は現在多くの日本企業が取り入れている米国流の短期の個人成果を重視した成果主義マネジメントとの相性が悪いのでうまく機能しないのではという懸念があります.
自律型人材によるチームワークを実現することが方針管理のマネジメントを効果的に実践するキーポイントなのですが,なぜ日本企業はそれが難しいのか.それを見事に説明してくれたのが京都大学の内田由紀子教授です.
https://www.youtube.com/watch?v=b3uwqHVtiJU
自律性と社会関係資本の2軸による4つのカテゴリーの中で,左上の「高い自律性かつ高い社会関係資本」が理想です.かつての日本企業は左下の「低い自律性かつ高い社会関係資本」でしたが,大多数の企業が左上の理想に向かわずに右上の「高い自律性かつ低い社会関係資本」に移行しています.一方,北米企業の多くは右上の「高い自律性かつ低い社会関係資本」から左上の「高い自律性かつ高い社会関係資本」に移行しています.このことは80年代に日本から品質管理を学んだ欧米企業が,それを自分達流にアレンジしてDFSS(Design For Six Sigma)などの新しいプロセスに再構築した流れと見事に対応します.DFSSのプロセスを効果的に実行するためには自律した技術者がチームワークを実践することが大前提なのです.DFSSは自律した個人が集まってチームワークを実現する手段という見方もできます.
米国企業は日本から学び理想の状態に到達した一方で,日本企業は米国から学びかつての米国企業のレベルに到達(劣化?)したということかもしれません.外部の取り組みを表面的に真似るのではなく,その本質を理解した上で自分たち流にアレンジする姿勢が必要かと思います.そして実はその本質はかつての日本企業にあったようにも思うのです.
かつて多くの日本企業は方針管理を自社のマネジメントに効果的に取り入れていたのですが,方針管理は現在多くの日本企業が取り入れている米国流の短期の個人成果を重視した成果主義マネジメントとの相性が悪いのでうまく機能しないのではという懸念があります.
自律型人材によるチームワークを実現することが方針管理のマネジメントを効果的に実践するキーポイントなのですが,なぜ日本企業はそれが難しいのか.それを見事に説明してくれたのが京都大学の内田由紀子教授です.
https://www.youtube.com/watch?v=b3uwqHVtiJU
自律性と社会関係資本の2軸による4つのカテゴリーの中で,左上の「高い自律性かつ高い社会関係資本」が理想です.かつての日本企業は左下の「低い自律性かつ高い社会関係資本」でしたが,大多数の企業が左上の理想に向かわずに右上の「高い自律性かつ低い社会関係資本」に移行しています.一方,北米企業の多くは右上の「高い自律性かつ低い社会関係資本」から左上の「高い自律性かつ高い社会関係資本」に移行しています.このことは80年代に日本から品質管理を学んだ欧米企業が,それを自分達流にアレンジしてDFSS(Design For Six Sigma)などの新しいプロセスに再構築した流れと見事に対応します.DFSSのプロセスを効果的に実行するためには自律した技術者がチームワークを実践することが大前提なのです.DFSSは自律した個人が集まってチームワークを実現する手段という見方もできます.
米国企業は日本から学び理想の状態に到達した一方で,日本企業は米国から学びかつての米国企業のレベルに到達(劣化?)したということかもしれません.外部の取り組みを表面的に真似るのではなく,その本質を理解した上で自分たち流にアレンジする姿勢が必要かと思います.そして実はその本質はかつての日本企業にあったようにも思うのです.
2021年4月20日 10時31分05秒 (Tue)
”働く”とは
最近,製造現場の仕事でちょっと気になる話を聞いたので共有します.
コロナの影響で技術開発のエンジニアが緊急的に製造現場に応援という状況となったのですが、そこで見た製造現場の皆様の仕事の進め方がJapan as Number Oneと言われていた頃と大分違っているとのことなのです.かつてQCサークル全盛だったころの日本企業の製造現場では,ばらつき低減や歩留まり向上のための様々な改善案が提案され,これが品質と生産性を同時向上させる原動力となり,日本製造業の競争力を高める一つの要因となっていました.これらの現場の改善活動は合格品を作る責任感をベースとした活動ではなく,良い製品を作る楽しさをベースとした自律的な活動であったと思うのです.ところが,どうも最近の製造現場では標準に従って合格品を作る責任ベースの業務になっているようなのです.規格ギリギリの製品を当然のように出荷していた1970年代の米国企業の方向に向かっているような???
福原先生から働くとは”早く”,”正しく”,”楽に”の3つであり,”楽に”をなくして”早く”と”正しく”だけでは仕事がきつくなるばかりで,工程の改善も進まないと学びました.自分の仕事を”楽に”することが結果的に歩留まりや生産性の向上につながると思うのです.”楽に”のための工夫を抑圧されて,”早く”と”正しく”だけを指示命令されたら仕事の面白みはなくなるでしょう.勤務時間の長さではなく,自律的な工夫の抑圧度が企業のブラック度の本質要因ではないかと思うのです.自律的な改善で業務を楽しく,楽にする.それによって工程能力と生産性が継続的に改善する好循環を実現できれば素晴らしいと思います.
コロナの影響で技術開発のエンジニアが緊急的に製造現場に応援という状況となったのですが、そこで見た製造現場の皆様の仕事の進め方がJapan as Number Oneと言われていた頃と大分違っているとのことなのです.かつてQCサークル全盛だったころの日本企業の製造現場では,ばらつき低減や歩留まり向上のための様々な改善案が提案され,これが品質と生産性を同時向上させる原動力となり,日本製造業の競争力を高める一つの要因となっていました.これらの現場の改善活動は合格品を作る責任感をベースとした活動ではなく,良い製品を作る楽しさをベースとした自律的な活動であったと思うのです.ところが,どうも最近の製造現場では標準に従って合格品を作る責任ベースの業務になっているようなのです.規格ギリギリの製品を当然のように出荷していた1970年代の米国企業の方向に向かっているような???
福原先生から働くとは”早く”,”正しく”,”楽に”の3つであり,”楽に”をなくして”早く”と”正しく”だけでは仕事がきつくなるばかりで,工程の改善も進まないと学びました.自分の仕事を”楽に”することが結果的に歩留まりや生産性の向上につながると思うのです.”楽に”のための工夫を抑圧されて,”早く”と”正しく”だけを指示命令されたら仕事の面白みはなくなるでしょう.勤務時間の長さではなく,自律的な工夫の抑圧度が企業のブラック度の本質要因ではないかと思うのです.自律的な改善で業務を楽しく,楽にする.それによって工程能力と生産性が継続的に改善する好循環を実現できれば素晴らしいと思います.
2021年3月30日 15時29分20秒 (Tue)
技術開発プロセスを設計するプラットフォーム"T7"に至る背景と活用方法
品質工学会と品質管理学会の共同研究会「商品開発プロセス研究会」のWG2「創造性と効率性を両立した技術開発プロセスの構築」の2年間の活動がゴールに到達し,この成果を実践活用する段階に入ったことはすでに報告しました.今回はこの活動で構築した技術開発のプラットフォーム"T7"に至るまでの背景と"T7"の活用方法を共有します.
【"T7"とその活用方法】
7つの要素と対応する技法
マネジメント関与
・目標設定と評価 Decision 機能性評価,ロバストパラメータ設計
帰納・演繹活動
・製品設計情報 ロバストパラメータ設計,実験計画法,物理式,AI
・分析 Type1 Type2 Type1 改善メカニズム分析:CS-T,GM
Type2 不具合モード:信頼性工学
アブダクション活動
・概念化 基本機能,源機能,R-FTA,公理設計
・(サブ)システム考案 Pugh,TRIZ,公理設計
・市場の創造 福原流QFD
仕組み運用
・顧客要求の定義 QFD
活用1 技術開発プロセスの設計
Step1 "T7"の7つの要素から必要な要素を選択し,実施順番を決定する
Step2 各要素から目的に応じて最も効果的な技法を選択する.あるいは技法を活用しない判断をする.
Step3 各要素の実施計画を立案する
【T7に至る背景】
当初は技術開発のプロセスを構築することを目指していましたが,リコー社内の技術開発の成功事例を見てもテーマ毎にプロセスが異なっていることから,一つのプロセスを構築することは無理であるとの判断に至りました.そこで,技術開発の活動に共通する”本質的な要素”を定義し,そこに技法を対応させることによって,技術開発プロセスを設計するためのプラットフォームを構築するアプローチに研究の方向を変更しました.その成果が"T7"です.【"T7"とその活用方法】
7つの要素と対応する技法
マネジメント関与
・目標設定と評価 Decision 機能性評価,ロバストパラメータ設計
帰納・演繹活動
・製品設計情報 ロバストパラメータ設計,実験計画法,物理式,AI
・分析 Type1 Type2 Type1 改善メカニズム分析:CS-T,GM
Type2 不具合モード:信頼性工学
アブダクション活動
・概念化 基本機能,源機能,R-FTA,公理設計
・(サブ)システム考案 Pugh,TRIZ,公理設計
・市場の創造 福原流QFD
仕組み運用
・顧客要求の定義 QFD
活用1 技術開発プロセスの設計
Step1 "T7"の7つの要素から必要な要素を選択し,実施順番を決定する
Step2 各要素から目的に応じて最も効果的な技法を選択する.あるいは技法を活用しない判断をする.
Step3 各要素の実施計画を立案する
活用2 現在の技術開発の課題可視化
現在の活動が"T7"のどの要素なのか,目標達成に足りない要素はないかについて判断する
2021年3月21日 13時53分14秒 (Sun)
前の投稿の続き
前回の投稿で治療方法によって結果がまったく違う体験を書きました.今回はその続きとして,この治療法の違いが信頼性工学と品質工学の違いと共通性があることをお伝えしたいと思います.
最初の治療法はしびれの発生源である骨の不具合をダイレクトに取り除こうというアプローチです.この骨の不具合は老化という劣化現象による必然的なノイズ因子であるとすると,最初の治療法は顕在化した症状の直接原因となったノイズ因子自体をなくすというアプローチですから信頼性工学のアプローチと言えます.
一方,後者のアプローチは直接の原因となったノイズ因子はそのままにして,骨の劣化現象というノイズ因子の水準が悪化の方向に変化しても症状が出ないように筋力を鍛えたり,筋肉の質を変えるというものです.これは身体というシステムの構造を変えることによって,骨の劣化というノイズ因子に対するロバスト性を高めるアプローチですから,品質工学の戦略そのものと言えます.
このように医療の世界でも不具合除去のアプローチだけではなく,ロバスト性改善のアプローチが存在し,そのアプローチが有効性を持つ場合があることを認識しました.もちろん直接原因を取り除く治療が有効なケースがたくさんあると思いますが,ロバスト性確保の治療も選択視に入れることもありかなと思います.さらに言えば未然防止の考え方で,症状が出る前にそれを予測して身体というシステムのロバスト性を事前に確保しておくことがより効果的なアプローチなのでしょう.
最初の治療法はしびれの発生源である骨の不具合をダイレクトに取り除こうというアプローチです.この骨の不具合は老化という劣化現象による必然的なノイズ因子であるとすると,最初の治療法は顕在化した症状の直接原因となったノイズ因子自体をなくすというアプローチですから信頼性工学のアプローチと言えます.
一方,後者のアプローチは直接の原因となったノイズ因子はそのままにして,骨の劣化現象というノイズ因子の水準が悪化の方向に変化しても症状が出ないように筋力を鍛えたり,筋肉の質を変えるというものです.これは身体というシステムの構造を変えることによって,骨の劣化というノイズ因子に対するロバスト性を高めるアプローチですから,品質工学の戦略そのものと言えます.
このように医療の世界でも不具合除去のアプローチだけではなく,ロバスト性改善のアプローチが存在し,そのアプローチが有効性を持つ場合があることを認識しました.もちろん直接原因を取り除く治療が有効なケースがたくさんあると思いますが,ロバスト性確保の治療も選択視に入れることもありかなと思います.さらに言えば未然防止の考え方で,症状が出る前にそれを予測して身体というシステムのロバスト性を事前に確保しておくことがより効果的なアプローチなのでしょう.
2021年3月13日 16時09分09秒 (Sat)
治療方法で効果が大違い
実は数年前から腕を前に伸ばした姿勢にすると右側の首から腕にかけてしびれが出る頸椎症性神経根症になってしまい,通勤途中の整形外科に通い投薬とリハビリの治療を継続していたのです.具体的な治療内容はメチコバールとリリカという薬を服用しながら首を牽引するリハビリを継続するというものです.首の骨に原因があることは明確なので,このリハビリは原因を直接的に取り除くという意味でとても納得できると感じていました.ところが一年以上にわたって薬とリハビリを継続しても改善効果はほとんどゼロだったのです.これはもう完治は無理かなとあきらめていたところでコロナの影響で在宅勤務が始まったことがラッキーでした.
その整形外科は通勤途中にあり,自宅から通うのはとても非効率なので在宅勤務になってから近所の整形外科に改めて通院することにしたのです.そこでの医師の一言が衝撃でした.レントゲン写真を見て,「これは2~3ヶ月で症状が軽減し,数か月で完治しますと」という予測結果が出されたのです.さらに「首の牽引は効かないでしょ」とも言われ,あまりに的確で,かつこれまでの治療方法を真っ向否定するストレートな発言に少々戸惑ってしまいました.で,その治療法はというと薬を変えることと,ストレッチなのです.薬の服用は最初の2か月くらいでしたので,メインの治療は理学療法士の指導によるストレッチです.最初の数か月はあまり効果実感がなく,半信半疑だったのですが,半年くらい経過したあたりから明らかな効果を感じるようになりました.その後ストレッチに加えて,筋トレによる体幹強化も理学療法士の方からアドバイスをいただきながら実施したので両方の効果だと思いますが,今ではまったくしびれがなくなり,完治することができたのです.理学療法士の先生には感謝感謝です.
治療方法によってこんなにも効果が違うことは驚きですが,その前に同じ整形外科でもなぜこうも治療方針が異なるのかについての疑問があるかと思います.前のクリニックでも首の牽引に効果がなければストレッチへという治療方針の変更があってもよいのではと思うのも当然なのですが,それについてはおそらく経営的に難しいのではないかと思っています.これは推定ですが,その通勤途中のクリニックは首の牽引など,高額そうなリハビリ機器が充実していてそれらへの設備投資は相当額になることは容易に想像がつきます.よって,設備の稼働率を上げることが優先されるのは無理もないなと思うのです.当然,リハビリ室には機器がいっぱいで理学療法士によるストレッチをしようにもそのためのベッドを置くスペースがありません.一方,近所の整形外科にのリハビリ室にはリハビリ装置はわずかしかなく,その代わりにそれなりの人数の理学療法士の先生方が活躍されています.この設備投資判断の違いが治療方針の違いになっているのでしょう.我々患者側がクリニックを選択することも重要ですね.
その整形外科は通勤途中にあり,自宅から通うのはとても非効率なので在宅勤務になってから近所の整形外科に改めて通院することにしたのです.そこでの医師の一言が衝撃でした.レントゲン写真を見て,「これは2~3ヶ月で症状が軽減し,数か月で完治しますと」という予測結果が出されたのです.さらに「首の牽引は効かないでしょ」とも言われ,あまりに的確で,かつこれまでの治療方法を真っ向否定するストレートな発言に少々戸惑ってしまいました.で,その治療法はというと薬を変えることと,ストレッチなのです.薬の服用は最初の2か月くらいでしたので,メインの治療は理学療法士の指導によるストレッチです.最初の数か月はあまり効果実感がなく,半信半疑だったのですが,半年くらい経過したあたりから明らかな効果を感じるようになりました.その後ストレッチに加えて,筋トレによる体幹強化も理学療法士の方からアドバイスをいただきながら実施したので両方の効果だと思いますが,今ではまったくしびれがなくなり,完治することができたのです.理学療法士の先生には感謝感謝です.
治療方法によってこんなにも効果が違うことは驚きですが,その前に同じ整形外科でもなぜこうも治療方針が異なるのかについての疑問があるかと思います.前のクリニックでも首の牽引に効果がなければストレッチへという治療方針の変更があってもよいのではと思うのも当然なのですが,それについてはおそらく経営的に難しいのではないかと思っています.これは推定ですが,その通勤途中のクリニックは首の牽引など,高額そうなリハビリ機器が充実していてそれらへの設備投資は相当額になることは容易に想像がつきます.よって,設備の稼働率を上げることが優先されるのは無理もないなと思うのです.当然,リハビリ室には機器がいっぱいで理学療法士によるストレッチをしようにもそのためのベッドを置くスペースがありません.一方,近所の整形外科にのリハビリ室にはリハビリ装置はわずかしかなく,その代わりにそれなりの人数の理学療法士の先生方が活躍されています.この設備投資判断の違いが治療方針の違いになっているのでしょう.我々患者側がクリニックを選択することも重要ですね.
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