Blu-ray Discと狩野モデル

2020年8月22日 18時30分48秒 (Sat)

7月15日のブログで狩野モデルについて説明しました.最近,狩野モデルの一元的品質と当たり前品質のトレード問題の好事例を体験したので共有化します.題材は光ディスクのBlu-rayです.光ディスクの最も重要な一元的品質である記憶容量においてBlu-rayの25GBは4.7GBのDVDや700MBのCDに対して圧倒的な優位性を持っています.もし当たり前品質とのトレードオフがなく,25GBを維持しながらCDやDVD並みの再生信頼性を実現していれば本物の技術といってもよいでしょう.

しかし,私はBlu-rayの規格が提案されたころからこの点について大いに疑問に思っていました.Blu-rayが25GBを実現するために採用した手段の中には青色レーザーのように一元的品質と当たり前品質を両立した本物の技術もありますが,原理的に一元的品質と当たり前品質がトレードオフ関係になってしまう手段も採用されているのです.それがレンズと記録層との距離です.Blu-rayはレンズと記録層との距離,すなわち基板表面と記録層との距離を大幅に短くすることで25GBを実現しているのです.その距離はCDの1.2mm,DVDの0.6mmに対して0.1mmです.

光ディスクやハードディスクなどの回転記録媒体の最大の敵は記録媒体のキズやほこりです.そして,回転記録媒体の信頼性を確保する方法はキズやほこりがつかないようにするか,あるいはキズやほこりがあっても十分な信頼性で再生できるようにするかのどちらかしかありません.ハードディスクはディスクを閉じた箱に閉じ込めているので外部からキズもほこりもつきません.一方,CDやDVDはディスクをリムーバブルに利用することが大前提ですから,長期間にわたって記録した音楽や動画を再生するためには,ディスクにキズやほこりがついても十分な精度での再生を可能にするしかないのです.つまり,キズやほこりは光ディスクにとって最大のノイズ因子なのです.

この光ディスクの再生ロバスト性の高さを確保する手段がレンズと記録薄膜層との距離を離すことなのです.それによってディスク基板の表面に照射されるレーザー光の面積を大きくすることが可能となり,キズやほこりに対するロバスト性を確保することが可能になります.このことは,レンズと記録層を近づければ近づけるほど大容量化が可能になることとの裏返しの関係であり,両者は単純なトレードオフ関係なのです.コピーマシンの印刷速度を高めるにはローラーの回転速度を高くすればよく,それ自体は簡単ですが用紙搬送速度を速くすればするほど用紙詰まりの頻度が大きくなってしままうことが本質的な課題です.これと光ディスクにおけるレンズと記録層との距離は同じ関係なのです.

実は3~5年ほど前に私が記録したBlu-ray Diskの再生不良が最近目立つようになってきたのです.2台の装置で再生してみましたが同じ場所で再生不具合が発生したので原因は装置ではなくDiskであることは間違いありません.どうやらBlu-rayの技術開発は狩野モデルの一元的品質を優先し,当たり前品質を犠牲にする方向でマネジメントされたようです.


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