成功事例ではなく成功体験

2023年9月11日 15時11分36秒 (Mon)

成功事例ではなく成功体験

 最初に手法と技法の違いについて簡単に説明します.手順通りに実施することで正しい結果が得られるツールを手法と呼ぶことにしています.統計的品質管理の多くのツールは手法と言えます.例えば原因x と結果y の間に明確な因果関係がある場合に単回帰分析を実施して予測モデルを構築しますが,そのモデル式は元のデータが同じであれば誰が解析を実施しても同じ結果が得られます.つまり正しい答えが存在します.多変量解析も同様に学習データが同じであれば結果に差がでません.ベイズ最適化も既存の制御因子の最適化が目的なので,最初に取り上げた制御因子と水準が共通であれば結果に大きな差が出ません.このように,手順で結果が決まる手法はツール化も可能です.単回帰分や重回帰分析はエクセルの分析ツールで簡単に解析結果を得ることができます.
品質工学による技術開発(その5)手法から技法そして仕組みへ - ものづくりドットコム (monodukuri.com)

 一方,技法とは結果を得るために発想や工夫が必要なアプローチです.枠組みは与えられていますが,評価計画や実験計画の立案には発想や工夫が必要になります.その代表が品櫃工学の機能性評価,ロバストパラメータ設計,CS-T法などです.これらの技法は機能の定義,現象説明因子の発想,さらには新規の制御因子やシステム構造の考案が求められます.このように創造性が要求される技法はツール化することができません.また,正しい結果も存在しません.役立つ結果を得ることが狙いなのです.役立つ結果とは意思決定や次のアクションにつながる技術情報のことです.
 
 かつて,良い手段は自然に広まるという考え方を前提にして,成功事例が活用拡大の原動力になるという意見が多くありました.しかしながら成功事例が活用の拡大にはつながらないということは過去の事例から明らかになっています.その理由はいくつかありますが,真似をしても成果につながらないということが挙げられます.では活用を拡大するにはどうしたらよいかですが,成功体験を持つ技術者を増やすことに尽きると思います.多くの技術者に成功体験を感じてもらうことを目的とした推進戦略が求められています.その原動力がOJTです.技法のスキルはOJTを通じた実践を通じて得るものであることは自分自身でも体験しています.

 

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